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「痛ってえなぁクソ。葉、今どうなってんだよこれ」
「うわぁーリリカ、こりゃでけえタンコブになってる。暫く治んねぇぞ」

孤島の寂れた民宿が私たちに振り当てられた選手宿舎だった。
チョコラブの活躍のお陰で持霊が使い物にならなくなったペヨーテに圧倒的な力を行使してリングアウトを叩きつけた蓮により、初戦は見事白星を収めた…まではスムーズだった。試合終了後、思ったより理想的な動きが出来ず(これは自分の力不足だけど)不甲斐なさで苛立ってた所、あの傍若無人大将がデリカシーのない発言をしたのでついに以前決心した、誤射と偽って精霊をぶつける行為をした。
それを見たホロホロも面白半分に氷の礫を投げつけ遂に蓮はプッツン、バカコンビと罵られて鉄拳制裁を食らった。

「次は無い。絶対にだ!俺は執念深いぞ」
「…すんませんした」
「俺はマジで手元が狂っただけだって」
「ほう、ならば二度と手元が狂わんようにこの俺様が直々で修行をさせてやろうか」
「…嘘です、すいませんでしたぁ」
「うぇっへっへ!おまえら本当仲いいなぁ」
「仲いいのかなぁ、これ」
「やかましいだけよ」

まん太君のボヤきをアンナのおかみちゃんが叩き切った。
彼女の目線が程度の低い集まりを見つめてるような目だ。わ、私もしかしてコイツらと同類に見られている!?
なんてこった、こんなアホアホ自分勝手集団の仲間入りだなんて、すごく遺憾だ…!

「おいリリカ、ぜってえお前しつれーな事考えてんだろ」
「えぇっ、そんな事全然考えてないぞホロホロ。…なんで分かったんだろう」
「聞こえてんぞ!顔に出てんだよ顔に!!俺の事バカにしやがって!」
「だって実際バカじゃねーかよ!私の憂さ晴らしに乗ってきやがって」
「憂さ晴らし…?リリカ、やはりお前俺を憂さ晴らしに使ったのか!」
「うるせー!!第一お前が好き勝手しすぎて私はムカついてんだよ!」
「うっさいのはアンタ達!!お黙りなさい!」

アンナちゃんの一喝で静まり返る。
この子には逆らえない凄みを感じるから、余計こうして叱られると萎縮してしまう。
…私も私だ、こんないい歳してこーんな子供にカッとなるなんて。恥ずかしい!

「お前らもうちょい仲良くしようぜ、オレ達一応チームメイトなんだからよ!チームメイト…?あっ、カロリーメイ」
「言わせねーから!」
「リリカ!オレの渾身のギャグを邪魔しないでくれ!!」
「ならもうちょい捻りのあるギャグを言ってよ」
「キビシーなぁ。ま、いつかお前も爆笑するようなお笑いを提供してやるからな!」
「…期待しないで待っとく」

この数ヶ月で必死にお笑い特訓してこのクオリティ。私の笑いの沸点に達するレベルのギャグを披露するのは多分遥か未来かはたまた一生来なさそう。
ブツブツ言ってネタ帳を広げジョークを練るチョコラブを横目に見て茶を啜ってると突然背後の襖が開いた。

「失礼するぜ」
「お、お前らさっきの坊さん達じゃねーか!」
「初試合ぶりだな!雪国ボーイ!」
「まぁそんなに身構えないで、別にもう戦う気なんてないから」
「俺達は君に礼を言いに来たんだ」

そう言うと二人はチョコラブを指さした。
……?あいつにお礼?お礼参りの間違いじゃねーのか。

「お、オレに??なんかしたか?」
「君の心震えるギャグで俺達はあのペヨーテの操り人形から助かった。感謝しても仕切れないさ」
「お陰で目も覚めた。もうハオの元に居る気も無くしたからな」
「はぇー、マジか。チョコラブお前やるじゃん!ギャグで2人の人間救った!!」
「…………リリカ…オレ、夢見てないか」
「夢じゃねーよ」
「やっぱりオレは間違っちゃなかった!笑いさえありゃ世界を変えれる!やったー!!!」

めちゃくちゃ嬉しそうな顔でチョコラブは飛び上がる。意外な展開で驚いたけど、良かったなぁ。
呆れた事もあったけど、割とアイツのやる事は間違いではないらしい。現にこうして救われた人間が居る。
今はまだまだ粗削りのやり方だけど、いつか成長した時本当に世界を変えるくらいのコメディを披露するかもしれない。
さっきはつまらんギャグだと小馬鹿にしてごめんな。でも実際面白くないから許してくれ。