オラクルベルの通知の音で事態は一変した。
次の対戦チームとそれらに参加する選手の名前を見て、竜は驚きやら色んなものが溢れ出したのかいつものキメたリーゼントがぐちゃぐちゃに崩れた。びっくり!
私のオラクルベルにも同じ通知が入ったので大体どういう事があってこうなったのかは分かった。次の試合はあのX-LAWSとナイルズという聞きなれないチームの試合。そしてX-LAWSのチームには、リゼルグの名前が入っていた。
あの子の試合が、始まるんだな。
取り乱す竜をそっちのけに、私はちょっとの不安と希望が湧く。彼は、自分なりの正解の道に歩めたようだ。少しは成長した姿が見れるのだろうか?
混乱したこの場で「試合を見に行こう」と言うのは少し気が引ける。抜け出して私だけ見に行こうかな…と思った矢先、何を思ったか竜が飛び出した。
多分リゼルグの試合を見る為に行ったんだろう、葉も追うように民宿から出てった。
「あー…悪い、蓮のこと任せた!私も先行ってるわ」
「あっ、おい!狡いぞリリカ!!」
「後で何か美味いもん奢るから許せ!」
この流れに乗って私もとっとと向かいたいが為に適当な事を言ったけど、よく考えたらこの無人島には飯屋は無かった。食堂はシャーマンファイト参加選手だとタダ飯食いできるし、なんも奢れるもんは無い。
……ま、いいや。後で言い訳して逃げよう。
そんなお気楽な事を考えながら急ぎ足で会場に到着すると、目を疑う光景が広がっていた。
「甘さじゃ誰も救えないんだ」
それは、なんの涙だ。どういった意図の言葉だ。
先に到着していた葉と私に気づいたらしく、答えを出すような瞳でこちらを見つめるリゼルグは今、何をしている。
兄さんを探してくれた、優しい事が出来るペンデュラムで相手選手を八つ裂きにして殺めようとしているのは、いったい誰だ。
想像とは遥か斜め上を行く状況に思考停止しそうになったが、彼がなぜこうしているのか徐々に理解すると次第に絶望して、強く後悔した。
言葉足らずだったから、不器用すぎたアドバイスとも言えない発言だったから彼はそれを変に受け取ってしまったのだと思った。
だって、数ヶ月前に私に悩みを打ち明けたリゼルグはこうして、自分の信念や憎悪を曲解し目の前でおかしな戦いを繰り広げている。
「…私のせいだ。完全にやらかした」
「はぁ?どういう事だ??」
「葉……本当に、すまんかった。今までリゼルグに言うなって口止めされてたから黙ってたけど、前に、私はアイツがX-LAWSに入るかどうかを相談された」
「ふぅん…そのリゼルグくんって子の事はアタシよく分からないけど、どうしてあんたはそんなに責任感じてるわけ?」
「……詳しい事は、今は言えない…けど、私が悩んでたリゼルグの背中を押した。クソみたいなアドバイスをしたからあいつ、曲解したのかもしれない」
アンナちゃんに経緯を説明しているあいだにも、リゼルグは以前の戦い方とは全く違う冷酷な攻撃で相手を瀕死に追いやっていた。
このままじゃマジで相手は死ぬ。リゼルグが人殺しになる。アイツの信じた道は、最善だと思った方向はそんな覇道だったのか。
優しさで首を絞めるとは言ったけど、自分をコントロールしろと言ったけど。
そういう意味じゃない。
自身の憎悪という苛烈さが優しさと戦いあって首を絞めると言おうとした。
自分の負の部分をコントロールしろと言おうとした。
けど全然伝わっていないじゃないか。
私はそういう意味で言ったんじゃない。
絶対に私の説明や言葉の不足のせいだ。
この時以上に自身の語彙力だとか、対人に対するコミュニケーションの乏しさを恨んだことは無い。自身の至らない部分によって1人の少年を、自身の軽率な言葉によって殺人者に仕立てあげようとしている!
「り、リゼルグはこんな酷いことをする子じゃねェよ…」
竜の言葉が深く突き刺さる。
私はもうその場に立ってられなくなって、膝から崩れ落ちてしまった。