X-LAWSと相手チームの試合は言葉に詰まる程ひどいもので、リゼルグにしてしまった事の後悔と自責に追い討ちをかけるような出来事だった。
彼らのトップであるアイアン・メイデン・ジャンヌと名乗る少女は、無茶苦茶だと思う難癖(彼らは悪罪だと言い張っていた)をつけ極端な手段を用い一瞬の内に相手を滅殺する。
その様子は独善により起こる理不尽な処罰としか言いようがない。
そんな残忍過ぎる事を平然と行う集団に仲間になろうかと迷う彼の背中を押したのは他の誰でもない、私だ。
幸い、と言っていいのか。いや、全く良くもない。けどリゼルグはこの戦いで誰一人殺すことは無かった。汚れた事は全てトップの純粋な狂気を持つ少女がした。
彼はきっと自分の優しさを無視して、ハオに復讐するためと銘打ちこれから人を殺め出すだろう。
私の不適切な説明で、少しの弱さも必要だと知らずに歪んでしまうだろう。
あの夜の考え無しな返答を今更悔いても遅い。
仲間の皆は私を除いて選手専用の食堂に行っている。自分はとても胃に何かを入れる気になれなかったので1人ぽつんと選手控室である民宿の縁側に座っていた。
時たま吹く夜風は重い私の心に痛烈に染みる。
「おぉ、まだ居たんかリリカ」
「葉…」
「お前来なくて皆心配してたぞー。らしくねぇ」
「飯食う気にはなれなくて、ちょっと…な」
「リゼルグの事、そんなに気になるか?」
今回の件で渦中にある少年の名前を聞いて、心が締め付けられるように痛む。
あまりにもわかり易い反応をしてしまったのか葉も私の変化に感づいた。
「…詳しくはわかんねぇからハッキリ言えねえけど、アイツはリリカの言葉が無くてもX-LAWSに入ったと思うんよ」
「どういう事だよ」
「うーん、多分1番吐き出しやすかったのがリリカだったんだろ」
「吐き出しやすかった…?」
「オイラだってたまにあるぞ。なんかでっけぇ悩み抱えてる時、1番受け入れてくれそうなヤツに全部言う。アドバイスしてくれとか言いながら、ほんとはただグチを聞いてほしいだけなんだ。まぁオイラの場合阿弥陀丸なんだけどな」
そう言うと葉はお決まりの毒っ気無い笑顔でこちらを向く。
吐き出しやすかった、うん、成程。
そういう考えもあるのか。
あん時の私は直前のハプニングで色々とボロボロだったから言葉の裏だとか、含みをあまり汲み取ることは出来なかった。
でもまだ腑に落ちなくて、言葉に詰まり葉の言葉に返答できず下を向いて黙っていたらすごい勢いで誰かに背中を叩かれる。飛び上がるんじゃないかって位驚きながら振り向くと、うんざりした様子のアンナちゃんが立っていた。
「まったく、あんた年長者を名乗るならしっかりしなさい。うじうじして恥ずかしいと思わないワケ?」
「わっ…アンナも帰ってきたんか」
「ごめん、こういう事に転ぶとは思わなくって、ショックで」
「リリカに相談しようと思ったくらいなんだから、下手くそなアドバイスも想定内だと思うしあの子があんたによっておかしな行動に走ったのならその程度じゃあないの」
「アンナは厳しいなぁ」
「葉はちょっと静かにしてて」
彼女の言葉は厳しいかもしれないけど、アンナちゃんなりに励ましてくれているのはひしひしと伝わる。
今日の一件以来の出来事を振り返ると、葉やアンナちゃんだけじゃなく、他の仲間達にも変な心配ばかりかけてしまっていた。
本当に情けない。
「ま、私は彼じゃないから言いきれないけど…いい加減にしなさい。葉の初試合も控えてるのにアンタにばかりかまけてられないのよ!いつもの馬鹿みたいな態度で受け流すリリカはどうしたの」
「………うん」
「返事をしたわね?ならもう明日からそんな湿ったらしい雰囲気出さないように、今日はもうさっさと寝る!」
そう言ってアンナちゃんは喝を入れるようにまた私の背中をぶっ叩く。
その衝撃でチクチクしていた心の針が取れたような気がする。彼女の平手はそんなに痛くない筈なのに、何故か少し涙が出た。