左門リリカと名乗る女の傍には、仰々しい異形の獣がぎらぎらと目を輝かせ車体から放り出された葉達を見つめていた。
「手荒な真似をしてごめんねぇー?そんな血相変えないでよ。ジョーダンだよ、ジョーダ…あ?」
勢いよく間合いを取り道蓮の掩月刀がリリカの頬を掠める。否、確実に息の根を止めるため急所を狙ったのだがリリカがうまい具合に回避したのである。
しかし彼等も馬鹿ではない。避けるのは計算の内であったので、既に次の攻撃の一手を出していた。
「ジョーダンでもやっていいことワリーことあんだろうがよ!」
「ハウンド!」
蓮の背後から氷塊の拳を纏うホロホロと呼ばれる少年が次手を放つが、彼女の操る獣が大口を開け氷拳を容易く噛み砕く。
しかし、少年はまだ余裕のある表情をしている。そう、まだそれすらも「計算の内」であったのだ。
「砕けちまったなぁ…氷がよ…あーあ、やっちまったな姉ちゃん」
「…クソが」
散り散りとなった氷の礫は瞬く間に膨張し、槍のように地を張り巡らせた。
乾燥し、少し暑いアメリカの荒野には似つかわしい氷の世界が、彼女を貫く。
遣い手の巫力の供給が途絶えたのか、あれ程までに仰々しく威圧感を放っていた獣はあっけなくゆらりと煙の様に消え去った。
「…終わったのか?」
「わからん。フン、喧嘩を売ってきた割には弱い」
「あ、トラックの運ちゃん元気そうだぞー!良かったな!」
「話を聞け!」
「痛てぇ!なんで俺を殴るんだよ!」
「そこに居る貴様が悪い」
「あのチャンネーはどーすんだ?」
「んー…置いていくってのもなぁ」
「マジか、マジで言ってんのかよ葉!俺は嫌だぜ」
「同感だ。これ程弱くともSFの参加者。己の身は己で守れない様ならの誰死ぬのも当然だ」
「…誰がよォ、野垂れ死ぬって?」
ゆらり、傷だらけのリリカは静かに立ち上がった。先程のちゃらけた雰囲気は消え、隠すことなく殺気立っている。
また、言葉遣いの変化も相まって大きな変化のように感じた。
「テメーだよなぁ?アタシの顔に傷つけた奴。女の顔にさぁ。なに傷つけてんだよオイ」
「ー、」
一同は何が起こったか、まるで分からなかった。
リリカが聞き取れぬ言語を呟き、見たことのない輝く石を握り砕いたかと思いきや、瞬時に蓮の身体は八つ裂きにされた。
「は…?」
「おいそこのバンダナ坊主、次はお前だよ」