私の家は、とてもではないけど「普通の家」ではなかった。
私が生まれるよりずうっと昔に貿易を営んでた御先祖様が、とある書物と出会ってしまった。
そこから私たち左門家は、狂ったんだと思う。
西洋魔術、そして今界とは異なる次元軸の者共の召喚。左門家に産まれた人間はこの柵から逃れることは出来ない。
ただ、巫力のない「普通の人間」を除いては
私の兄はとても優しかった。無理に知識を詰め込もうとしてくる家の者に対し心痛めてる時何度も何度も、優しい言葉を与えてくれたし、一人ベットで眠りにつく事が怖い時、一緒に寄り添ってくれた。
本当に優しい人だ。
だけど、うちは普通の家じゃない。優しさを長所として認めない。
力を持たぬ人間は、間引かれる。流石に殺しはしないが遠縁のものに引き取られ「左門」を名乗ることのないように。それが慣例だった。
例に漏れず兄も、左門家から捨てられた。存在を消された。
おかしい。気が触れてる。
私の求める優しい家族は一体どのようにすれば手に入るのだろう。
しきたりも、格式も、ましてやオカルト紛いのことも関係の無い、優しい私の世界が欲しい。
こんな家も、こんな家にした世界の狂気を、ぜんぶ、全部ぶっ壊してやる。
私が精霊王になれば、その願いを叶えてやる。
私の望んだ優しい世界。そしてその世界の為には、あの優しさの象徴である兄を、見つけなければいけない。
ハオは、そこにつけこんで来やがった。
ー左門リリカ、お前の兄貴の居場所を教えてやるよ
ー麻倉葉達を叩きのめしてほしいんだよ。君ならできるよね?
「って言われて真に受けた私がアンタらんとこ来たんだよ」
「左門のネーチャン、そんなことあったんだなあ…ううっ…兄貴みつかるとい゛い゛なぁ…」
「うわっ、なに泣いてんだよ大の男が!恥ずかしっ!」
リーゼントの男がトラックの助手席から話を聞いていたようで、何故か号泣してやがった。
何盗み聞きしてんのよ…
「てか、そんな変な呼び方しないでよ気持ち悪い、私左門って名前嫌いなの」
「ほーん、じゃあリリカ」
「だからといって呼び捨てにしろって言ってねーよ」
「いいじゃねーかだってこれから仲間になるんやし」
「…は?」