今日はいつもより大きく美しい満月の日らしく、夜の帷によって余計金色に輝く月が映えた。

またあの気紛れか、あの河原でのやり取りのあとアイツは姿を表さなかった。
とてもいい気分だというのに、穏やかな平穏だというのに。
この虚無感はなんだ。僕は一体どうしたというのだろう。

そしてあの言葉の意味は何なんだ。僕の考えを見透かすようなことを言いやがって。

あぁ、イライラする。虫の居所が悪い。

……僕の心を乱す女は今ごろ、平然と日常を送っているんだ。
ちっちぇ存在の癖に、いいご身分だよ全く。

どうにも腹が立つので、柄にもなく僕は憎き竹取の娘を懲らしめてやろうと街へ繰り出すのだった。

6 富士の山

「……おい」

すたすたと歩く後ろ姿は紛うことなきあの女だ。
閑静な街をコイツはいつもの何も考えてなさそうな馬鹿面を下げて歩いていた。
……こっちの気も知らないで。

「驚いた。どういう風の吹き回しかしら」
「五月蝿い。僕は今何を思ってるかわかるか」
「分かるわけないでしょう。貴方とは違うのよ」

呆れるようにこちらを向くコイツは僕の言葉の真意が分かってない様だった。
変な所は鋭い癖に、こういう時はすっとぼける。
そんな仕草も余計鼻につく。あぁ、僕はコイツが大嫌いだ。

「あの時の言葉はどういう意味だ」
「……?あの時…あぁ、最後にあった時の事かしら」
「それ以外何があるって言うんだい」
「……教えてあげない。あなたが気づくまで」

不敵な笑いと共にあの耳障りな笑い声を出すコイツに、僕の色々と溜め込んでいたものが爆発した。
絡繰が分からなかろうと知った事か。転生しようとも何度も殺せばいい。
この不快な元凶をさっさと潰せばよかったのだ。
何を臆することがある、燃やしてしまって、それで、僕のこの鬱屈とした感情も消し炭にしてしまえばいい。

「…………殺さないの?」
「あ、な、何故、」

スピリットオブファイアの掌は、寸での所で留まってしまった。
何故だ。このまま握り潰せばいいのに、なぜ出来ない。
持ち霊の手先から漏れでた炎が、アイツの毛先を焦がすのみ。何で、拒めるんだ。

「ほんと、鈍いわねぇ。貴方にはずうっと分かりっこないのかしら……幻滅したわ」

そう言うと、静かに彼女は歩いていた道へと戻る。
殺せなかった。何故?幻滅だと?
コイツによって、もうこれ以上掻き乱されたくないのに、余計心はこんがらがる。
分からない。分からない。

どうして僕はここまでアイツに振り回されてるのだろう。
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