サンダルウッドの情念
21.真っ赤な白



都大会当日
目が覚めると9時54分。青学集合は確か…

「ああーーーー!!!」




急いで大石副部長へ電話をかけた。
「子どもが生まれそうな妊婦さんを助けて病院に向かってます。」
そんな子どもじみた嘘も大石副部長はそうか!と真に受けてくれるから人が良すぎるのもどうかと思うね。


会場につくと堀尾がつまらないことで騒ぎを起こしていて、ウォーミングアップついでに堀尾に絡んでいたゴリラのおっさんにツイストサーブをお見舞いする。正直こんなことしてる場合じゃないんだけど。



「コノヤロウ、帰ったら校庭40周だな!」
「痛いっス。」

なんとか自分の出番のS2までには間に合って、合流すると桃先輩に頭をぐりぐりされた。

「聞いたぜ?名前は出る前に起こしたって言ってたけどお前二度寝かよ?贅沢なやつ!」
「…あれは名前が悪い。」
「はあー?」
「そこ、何をしている。越前、試合に出る準備をしろ。」

手塚部長の呼びかけで姿勢を正す。都大会初戦は1ゲームも落とさない完全試合を達成した。




「久しぶりに試合見たけど、手塚部長やっぱりすごいね。」

試合終了の挨拶を終えてコートを出ると名前が近づいて来た。
名前はいつも練習着には緩めのトップスを身につけており、今日とてTシャツの上に大きめのジャージを羽織っている。その服の下はあんなに華奢で、あんな下着をつけているのだと思うとつい腰回りに目線がいく。

「…まあ。でもそれを俺に言いに来たんじゃないでしょ。」
「うん。私が桃に怒られたんだよ。悪いのは誰?」
「…俺だね。」

昨日、風呂場でカルピンを洗う名前の姿を思い出す。あれは名前が悪い。昨日はなんだかムシャクシャしてなかなか眠れなくて。名前が今朝起こしにきたのも正直記憶にないのだ。



「…ていうかそれ俺のだよね……。」
「それも今朝言ったよ?」


勘弁してくれ。
名前は俺の赤いジャージを翻して次の試合会場へと向かっていった。



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