セイラルの唄
魔法生物飼育学今日の授業は魔法生物飼育学だった。実習として、ビーストン教授が持ってきた比較的おとなしい種族のドラゴンを使い、鱗の硬さを調べる課題が出された。
本来この授業は三年生からの選択科目であったが、珍しく実物のドラゴンが来るとのことで下級生にも見学の許可が出たのだった。
名前はスリザリンのグループで待機し、リョーマはグリフィンドールの仲間と近くにいた。三年生が順番に課題をこなしていく中、一、二年生は離れたところからそれを見ていた。生徒たちの目はドラゴンに釘付けだ。平和で良い。名前は少しだけ息をついた。
リョーマが隣に寄ってきて呟いた。
「今日は静かだね。」
「みんないい加減、同じ話題に飽きてきたんだよ。今日はドラゴンもいるし。」
「あんた面白くない反応しかしないからね。」
実のところ、名前の周りが少し落ち着いてきたのはハロウィン以降である。それまでは何をしても魅了について好奇の目が纏わりついていたが、二人がパーティーの夜に手を取り合って踊ったことで、周囲への良い牽制になっていた。それに二人はなんとなく気付いてはいたが変わらぬ態度で過ごしていた。
「ドラゴンが来るって聞いたからどんなものかと思ったけどあまり動かないね。」
「うん。眠くなる。」
安全のため入門編として連れてこられたドラゴンらしい。ターコイズグリーンの鱗に覆われた尾を大きく揺らしている。サイズこそ大きいものの、おっとりとした性格だった。二人は枯れた芝生に腰掛けそれを眺めた。
「ドラゴンの血を引く魔法使いっているのかな。」
唐突に名前が口を開いた。
「さあ…。聞いたことはないけど。」
「私みたいに他の種族の血を引く魔法使いがいるなら、ドラゴンだってあり得るよね。」
リョーマは視線を巡らせ言葉を選びながら言った。
「まあ…、要はそれと子孫を遺せるかどうかじゃない。」
「ああ、問題はそこか…。」
リョーマは一瞬黙り、そして、口の端を上げて笑い出した。
「ドラゴンとどうやって…。」
「想像するのも無理があるね。」
「想像するなよ。」
名前もつられて笑った。
「ごめん、悪趣味なことを言った。」
あまりに自然に笑うので、周りの生徒たちはその二人の姿を見て呆気にとられていた。
「あのサキュバスが笑うなんて」という囁き声が聞こえているのかいないのか、二人は変わらずドラゴンを見ていた。
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