Chapter8 〜修練〜




一日経って。

後から始めた桃、やちる、狛村も鬼道練習に疲れを見せ始め、更木が漸く制御出来た頃。

間に細かく休憩を挟みながらコントロール修行をしていた京楽や卯ノ花が、全く休みなく鬼道を打ち続ける冬獅郎と白哉に怪訝な視線を向けていた。


「彼等は霊力が無限なのかい?」


そう思うのも無理はない。

けれど、玲の目から見れば、霊子変換による霊力回復と鬼道による消費を常に繰り返している彼等の体力は限界のはずだった。

まだ立って鬼道を打っていられるのは彼等の意地だろう。

回復が消費に追い付いている以上、霊力が枯渇する事は無いが、身体への負荷は通常の消耗とは段違い。

現に彼等の瞳が、何処か人形の様に濁っていて。

仕方なさそうに息を吐いた玲は、すっと彼等に歩み寄った。


「冬獅郎。白哉。もう良いから、一度寝て来なさい」


何時もより大きめの声で言葉を投げると、詠唱が止まり、瞳が玲を捕らえると、少し揺らいで、それから二人して崩れ落ちた。

当然だろう。

約二日、休みもせずに霊力を回復し、消費し続ければ誰だって気絶する。

張り詰めていた糸が切れたかの様に、眠っている二人を玲は呆れの眼差しで見遣った。

テーブルから見ていた卯ノ花と京楽はきょとんと目を瞬かせた。


「えぇ?どうしたんだい?」


「玲さん、お二人は大丈夫なのですか?」


状況が理解できていない卯ノ花と京楽にふと笑みを浮かべて。


「取り敢えず、寝かせてくるね」


自身の霊力を身体に纏って、身体能力を強化した玲は、二人を休憩室に運び込んだ。

部屋が別だと様子を見難い為、自分の部屋にベッドを二つ創り出して、そこに寝かせる。

天照の力を借りて、緊張を解し、体力を少し回復させると、苦しげだった表情が幾分か柔らかくなる。

けれど、丸一日は起きる事は無いだろうと判断して、玲は部屋を出た。



修練場所に戻ると、卯ノ花の目が説明しろと訴えていた。

仕方なくテーブルに座ってお茶を淹れ、息を吐く。


「この空間ね、瀞霊廷よりも霊子濃度が高いんだよ」


「確かに、霊力の回復がいつもより早い様には感じますが…」


「あの二人はそれが顕著に出たの。元々霊子を変換して自身の霊力を回復する事に長けていたんだと思う。
それをね、多分あの戦闘で意図的に出来るようになっちゃったんじゃ無いかな」


卯ノ花の目が見開いた。

信じられないとでも言うように。


「霊子での回復を意図的に…?!そんな事が可能なら、傷の治療も、霊力の補給も彼等の意思で出来てしまうという事に…」


「その通りね。でも、急速な霊子の吸収は、身体に大きな負荷が掛かる。一見無敵に見えても、体力面では諸刃の剣。それを意思の強さだけで補ってた結果がさっきの昏倒だよ」


暫く無言でいた卯ノ花が、ふっと息を吐いて首を振る。


「無茶苦茶な方々ですね」


「…天才、と言ってしまえばそこまでなんだけど。それが出来ると知ってしまえば無茶ばかりしそうだし。どうしようかな…」


本気で悩んでいる玲は、こんな力を与えるつもりなど無かったのだろう。

だからと言って、霊子変換速度を抑えてしまえば、彼等の生命力や治癒能力まで抑える事になってしまう。

霊力の様に数値化出来るような代物でも無いため、適正レベルに補正するような道具も創れない。

結局、様子を見るしか選択肢は無かった。


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