Chapter9 〜流転〜





私は一番隊の隊主室…の特別に用意された長椅子でぼぅっとしていた。

十番隊も六番隊も、皆バウント捜索で出払っていて。

部屋の主が居るのが此処だけだった、なんて理由なのだけれど。

何故か副官の雀部さんが凄く気を遣ってくれて。

目の前のテーブルにはお茶やら茶菓子やらが所狭しと並べられている。

それを何処と無く苦い顔で見つつ、隠密機動や刑軍達が持ち寄って来る情報を、地獄蝶を介して各隊に知らせているお爺ちゃん。

何と無く、文句の一つも言いたそうな彼に、


「お茶飲む?」


なんて、見当違いな提案をすれば、深々と溜息を吐き出されて。


「関与しないとはいえ、お主は曲がりなりにも死神じゃろう。捜索にすら出向かず何を寛いで居る」


「バウントの霊圧、探れないんでしょ?」


そうでなければ、幾ら流魂街が広いとはいえ、此処まで捜索が難航する事は無いだろう。

尤も、私には彼等が何処に居るか、分かるのだけれど。

それはさっき白哉が斬ったバウントの霊子データを読み取ったからで。

でなきゃ私でも探すのにかなり集中しなきゃ難しい。

それ程、バウントは霊圧を消す事に長けている。


「…そうじゃの。現状では、異変の見られる地区に死神を急行させる事しか出来ん」


「彼等は死神が過去に犯した過ちの結晶。
四十六室が存在を認めず隠蔽し、救いを求める彼等を裏切るように排他した、その末路がこの騒動。それを分かっている上で、尚、手を貸せと言うなら、構わないけれど」


暗に私には関係無いと告げ、眉根を寄せる元柳斎を尻目に、ぱくりと羊羹を口にする。

餡蜜も、人形焼も、団子も美味しいのだけれど。

やっぱり、口の中で蕩けるこの感覚が好き。


「…全く、口ばかり達者な小娘じゃの」


「え〜、お爺ちゃん卍解しても私無傷だったけど?」


くすりと嫌味を吐露すると、元々皺の多い顔が更に厳つく皺を寄せる。


「はいはい、分かったよ。バウントだってこの世界に無害なわけじゃ無いし」


ふぅっと溜息を零してお茶を飲むと、空になった湯飲みをテーブルに戻す。


「雀部さん、ありがとね。ちょっと出てくる」


「いえ、お気になさらず。何処へお出掛けで?」


不機嫌な部屋の主の代わりに、彼が問いかけてくる。


「十二番隊」



笑って出て行った玲を見送り、雀部は茶菓子を並べたテーブルを見た。

羊羹だけが綺麗になくなっていることに気付き、苦笑する。


「山本殿」


「…わかっておる。あれが彼奴なりの気遣いである事ぐらいの」


何もかも、頼ってしまっては死神達が堕落する。

今回の件も、あの少女のならばほん気まぐれで全て片付けてしまえる筈。

それをしないのは、他の死神達に功を立てさせる為なのだろう。

何とも言えない感覚に、元柳斎は再び溜息を吐いた。


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