Chapter9 〜流転〜





「事態は火急である!」


一番隊の隊主室で、集まった隊長達の前で元柳斎が太い声で言い放った。

一日も経たないうちに、瀞霊廷の中にまで入り込まれたのだ。

草鹿の荒くれ共を率い、精霊壁をこじ開ける為の巨大な道具を作らせ、空間移動で其処に現れて。

真正面から、進入を許したのだ。

敵の頭の良さに歯噛みするも、霊圧を消す事に長けているバウントの捜索は難航していた。


其処へ。


「あ、やっぱり召集してたね。お爺ちゃん、これあげる」


ひょっこり現れた玲が投げやった物を、元柳斎は受け止める。

最早彼女が隊主会に乱入してくる事に、異議を唱える者も居ない。


「此れは?」


「バウントの霊圧を感知するセンサーだよ。マユリさんが作ってたから、複製してきたの。はい、他の隊長達も」


渡された其れが瀞霊廷の細部で点滅するのを、皆して唖然と見つめる。


「あの時の霊子データか」


白哉の呟きに、玲が反応し、唇に人差し指を当てる。

皆が注目してる中で、そんな事をしても意味は無いのだが。


「じゃあ、後は宜しくね」


あっさりとその場を去ろうとした玲に、若干焦った様な声が掛かる。


「待て!」


「何?更木さん」


「なんで俺のはねぇんだ?」


「え…渡しても、どうせ迷子になって意味無いかなぁと…」


更木のこめかみがピクリと震える。

この戦闘狂に面と向かってこんな事を言ってしまえるのは恐らく玲ぐらいのものだろう。


「んだと?!俺も毎回迷ってる訳じゃねぇぞ?!」


今にも斬魄刀を抜き放ちそうな剣幕に、玲が溜息を零して、懐を探る。

そして、他の隊長達に渡したセンサーと同じ物を取り出すと、虹色の光で複製し、少し手を加えて更木に投げた。


「それなら、一番近くに居るバウントの現在地を示してくれるよ。道案内付きで」


「てめ、馬鹿にしてんのか?!」


「無いよりはあった方が良いでしょ?迷ってる間に他の人に取られちゃったら怒るくせに」


余りに的を射たその言葉に、何も言えなくなる更木。

京楽の肩が震えていたのは、笑いを堪えているからだろう。

他の隊長格達は呆れていたが。


「じゃあね」


ひらりと手を振って出て行った玲を見送り、元柳斉は溜息を吐いた。

しかし、彼女のお陰で一番の懸念事項が払拭されたのも事実。

やれやれと首を振ると、結局玲を動かしてしまったことに隊長格皆が息を吐いた。


「まぁ良い。これで隠れんぼは終いじゃ。速やかにバウントの殲滅に当たれ」


彼の指示で、隊長達が散ってゆく。

殲滅戦の幕開けだった。


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