Chapter10 〜予兆〜





「なぁ、さっきのって何なんだ?」


「さっきのって?」


持ってきていた弁当を食べだした檜佐木が、思い出したかの様に問う。


「あの、静電気みたいな、アレ」


「自動防衛機能…とでも言っとこうかな」


「自動って事は勝手にって事か?発動原理は?」


「私が恐怖又は嫌悪を感じる対象に攻撃する。威力はあれが最小」


「…嫌悪…」


玲の言葉にずんと沈み込む檜佐木。

ついさっき心を持って行かれた相手に言われた言葉がそれでは無理も無いが。


「だって修兵、嫌らしい目してたじゃない」


「俺そんな分かりやすいか?」


「うん。加減してあげただけ、マシだと思いなよ」


因みに過去、この自動防衛で京楽が失神している。

修練場所に勝手に持参していた酒で酔い潰れ、玲に纏わり付いて、怒りを買ったのだ。


「…因みに今までの被害者は?」


玲はどうしてそんな事を聞くのかと訝しげな視線を向けるが。

檜佐木にとってはかなり重要な事なのだ。

自分だけ何て言われれば、今日早退する自信があるぐらいには。


「…冬獅郎、白哉、京楽、浮竹さん、後は…よく知らない人が何人か」


とどのつまり、玲に触れようとした男死神はほぼ全員だ。

同性に対してはどこか遠慮がある様で、被害に遭ったものは居ないが。

檜佐木は、普段殆ど一緒にいる日番谷や朽木まで被害に遭ってると知って、安堵の息を吐いた。


「つか、隊長格の霊圧が変容してんのってお前の所為?」


「まぁ、特訓したし」


さらりと答えて海老を突く玲に、檜佐木はがくりと肩を落とした。


「なぁ、俺此処開けてたの二日程だぜ?その間にって、何の嫌がらせなんだよ」


「別に、人数制限があったから、あの時やっただけだよ。霊力戻ったし、またやるなら何時でも出来るけど?」


玲の様子から悪気は無いと判断した檜佐木が、ならばと話に食い付く。


「なら、瀞霊廷通信の編集終わったら、付き合ってくれよ」


「何時?締切」


「三日後」


「ふぅん。まぁ、いっか。なら、総隊長に話通しとくから」


その言葉に檜佐木が目を見開く。


「なんで、総隊長?」


「伝令してもらうの。次の特訓三日後にするから、来れる人は来てって」


「…つっても、夜の数時間だろ?」


「私がそんなに緩い事すると思ってるの?」


そうだ。
目の前の彼女は何でもありなのだ。

喩え時間軸を変容させたっておかしく無いぐらいには。


「こっちの一時間は向こうの一日だよ?」


珍しく冴えた勘が当たって、出来るなら当たってほしくなかったと息を吐く檜佐木だった。


その後、隊主室を占拠していた滅茶苦茶な量の書類を、夕刻までに片付けた玲は、ちょこっと編集室にも顔を出し、悪戯に加筆修正して九番隊を出た。

その修正能力がやはり飛び抜けて居て、編集速度が倍増しになったのはここだけの話。

結局その月の瀞霊廷通信が締切の前日に出来上がり、九番隊は歓声に包まれたと言う。


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