Chapter10 〜予兆〜





「お疲れ様」


「あ、玲ちゃん!」


労いの言葉を掛けながら入った十番隊隊主室で、凄く嬉しそうな表情の桃に飛びつかれて、私は首を傾げた。


「どうしたの?」


とりあえず桃に問うと、きらきらとした笑顔で答えてくれる。


「明日は五番隊に来てくれるんでしょう?!お茶菓子美味しいの用意しとくね!」


成る程。

総隊長は、手が回らない隊に私をたらい回しにするつもりらしい。

今度機会があれば絞めようと心に決めつつ、にっこりと桃に微笑みを向ける。


「うん、ありがとう。楽しみにしてるね」


ふわりと桃の頭を撫でて見送った後、小さく溜息を吐く。


「今日は九番隊の執務整理だったんだろ?こんな時間になるなんて珍しいな」


疲れが顔に出ていたのだろうか。

冬獅郎が珍しくお茶を淹れて出してくれる。

此処では乱菊がいる時は余り自分から席を立とうとはしないのに。

そう思って、周りを見渡し、副官が居ないことに漸く気付く。


「…隊主室が書類倉庫になってれば時間もかかるでしょ」


「あぁ…九番隊の期限過ぎた書類がやけに多いとは思ってたが…」


翡翠の瞳が若干憐れみを孕んでいるのを見て、また小さく吐息を溢した。

幾ら処理能力が高いと言っても、所詮演算効率を上げているだけで。

一応人間なのだから、人の何倍もの仕事を一気に片付けて疲れないはずも無い。


「冬獅郎。羊羹食べたい」


脳が疲れた時は甘い物とはよく言うもので。

無性に食べたくなったそれを口にすると、ぽんぽんと頭を撫でられた。


「今日はもうすぐ終わるからな。甘味屋行って、飯でも食いに行くか?」


「うん」


頷いた私はもう無一文では無い。

死神と認められ、無所属を認めさせた次の日。

つまり、彼と現世へ降りた後に、此方の金子は幾らか貰っていた。

お爺ちゃん曰く前払いだそうだけれど。

因みに昨日の修復の後にも、大工に払うはずだった金子を幾らか貰っていて。

別にお金の為にしたんじゃ無いと突っ返したのだけれど、半端無理矢理持たされてしまった。

つまり、お金は何故か沢山あって。

私は、偶には奢ってあげようかな、なんて企んでみるのだった。


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