Chapter2 〜天賦〜

「乱菊〜。遊びに来たよ」
昼食後、白哉に送ってもらって十番隊の隊主室まで来た私。
彼の行動が、任務の為なのか、唯の過保護なのか分からなくなってきたのは置いておいて。
扉を開けるまでもなく、開かれた扉と。
押し付けられる大きな胸。
本日三回目なので流石に慣れた。
呼吸困難必死のそこに顔を突っ込まないように、軽く身体を逸らして受け流す。
「あら、玲。慣れてきたわね?そんなに素っ気ないとお姉さん泣いちゃう」
そんな言葉とは裏腹に、にっこり笑顔の乱菊に、微笑んで抱き着き返すと悲鳴が上がった。
「きゃああ!玲、それどこで覚えたの?可愛いっ食べちゃいたいっ!」
そんな言葉に過剰反応を見せる青年が一人。
「〜松本!食うなよ?それと煩い!」
「あら、隊長。やっぱりそこなんですか?可愛いですもんね、玲。隊長が気になって仕事が手に付かないのも分かります」
「余計な事言ってんじゃねぇ!仕事終わってねぇのはお前だろうが!」
この彼等の会話は何時も冬獅郎が声を荒げる。
もう癖なのか、それとも乱菊がお茶目過ぎるのか。
絶対後者だけど。
「終わりましたよ!急ぎの書類は!後は明日に回したって平気です」
「何処からその自信が湧いて来るんだ。明日の書類と纏めて出来る処理能力がお前にあるのか?」
「気の持ちようですよ。ほら、折角玲も来てくれたんだし、お茶しましょうよ、隊長も」
正論を述べる冬獅郎と、のらりくらりと躱す乱菊。
控えめに見ても、冬獅郎に勝ち目は無い。
「てめぇは…「冬獅郎。書類なら後で手伝ってあげるから。ね?」
彼が本気でキレる前に、助け舟を出すと、大きな溜息が聞こえた。
「…疲れる」
「大変だね。おいで」
乱菊は奥の部屋でお茶の準備をしているため、此処には居ない。
長椅子に座り込んだ冬獅郎の頭を労わるように撫でると、ピリピリしていた空気が和らいだ。
「お前…簡単に男に触れるなよ…」
そんな事をぼやきながら、拒絶はしない冬獅郎に、首を傾げる。
「触れたら、何かあるの?」
「…襲われても文句言えねぇぞ」
「私に勝てる死神いるかなぁ?」
「そっちじゃねぇよ…いや、まぁ返り討ちに出来るんなら、そこまで心配する程でもねぇか…」
「…うん?そうだね?」
よく分からないと顔に出ていたのだろうか。
冬獅郎は暖かさと呆れを孕んだ眼差しで此方を見つめた。
「お前のそばは酷く心地が良い」
「私は冬獅郎といると楽しいよ」
微笑んで、そう告げると、彼は何処と無くホッとしたような表情になった。
- 20 -
<*前><次#>
栞を挿む
ALICE+