Chapter2 〜天賦〜





「あら、隣に座っちゃって〜。何話してたんですか?」


戻ってきた乱菊に茶化されながら、お茶を手渡され、お皿に乗った黒いような紫の様な、四角い不思議なお茶請けが置かれる。

私はそれを情報検索。

結果羊羹だと判明。

材料もわかったから、警戒心は無いけれど、好奇心は凄くある。


備え付けてあった楊枝で適度な大きさに切り分けて、口に運ぶ。

と、口に入った途端、蕩けるような感触と、丁度いい甘さが味覚を刺激して、凄く幸せな気分になった。


「あら、玲、羊羹好きだったのね」


自然に笑みが溢れていたのだろう。

乱菊に微笑ましそうに見つめられる。


「うん、これ美味しい。なんだか凄く幸せ」


答えると、冬獅郎がまだ手を付けていなかった羊羹を此方に押した。


「ならこれも食べろ。俺は好きではなからな」


彼はちょっと嘘つきだ。

どっちかと言うと見栄っ張りなのかな。

普段は嘘なんて付かないのに。


「でも冬獅郎、甘いもの結構好きでしょ?こういうのって少し食べるのが美味しいんだよ?いっぱい食べちゃうと有り難み無くなっちゃう」


さり気無く断ると、冬獅郎は複雑そうな顔をした。


「…そういうもんか」


「そうだよ〜」


そんなやり取りを交わしながら、お茶をしていると、隊主室の扉が叩かれた。


「五番隊副隊長の雛森です。瑞稀さんはいらっしゃいますか?」


きょとんとしていると、冬獅郎と乱菊が此方に視線を向けたため、立ち上がって扉を開ける。


「はい、瑞稀ですが…あ、貴女は昨日の…」


昨日、白哉に連れ去られる前に冬獅郎を見て嘆いていたお団子頭の女の子だった。

そう言えば情報に彼女の顔もあったなぁなんて、今更ながらに思い出しながら。


「こちら、十二番隊隊長から預かってきた霊圧抑制装置です。それと、少しお話宜しいでしょうか」


酷く無骨な抑制装置を渡され、固い表情で問われる。

どうして、こんな堅苦しい言葉遣いなのかと首を傾げつつ頷くと、彼女を部屋へ通した。

私の部屋じゃないけれど。


「あら、雛森。玲に何か用なの?」


長椅子で寛いでいた乱菊が、何時もの調子で声を掛ける。

副隊長同士、仲が良いのかもしれない。


「うん、そうなの。じゃあ、瑞稀さん本題に入ってもいいですか?」


くるりと真剣な目で振り返った雛森に、目を瞬かせながら頷く。


「シロちゃんを…いえ、日番谷隊長を元に戻して下さい!」


何処と無く圧力を感じる言葉を流し、冬獅郎に視線を向ける。

彼の目は冗談じゃないと語っていたけれど。


「良いよ?本人が戻りたいって思っているのなら」


私は少し意地悪を言ってみた。

すると雛森さんは冬獅郎に向き直り、すごい剣幕で詰め寄る。


「日番谷君!戻りたいよね?!」


「いや、俺は別に…」


「どうして?!薬間違えられて突然大きくなっちゃったのに、今のままがいいって言うの?」


話の流れを見るに、私が薬を間違えたという事で彼女らは納得しているようだった。

それが確認出来ただけでも良いかな。

私は元の長椅子に戻って、冬獅郎が雛森さんを諌める声を聞きながら、羊羹を頬張る。

乱菊さんには、呑気ね…なんて、呆れられたけれど。


「だから!お前が前の姿に執着するのは、俺を子供扱い出来なくなったってだけの理由だろうが!」


「そんなんじゃないよ!突然身体大きくなって、なにも悪影響出ないはず無いじゃない!」


「俺が飲んだのは魂魄安定剤だって言っただろ?!なんの悪影響が出るってんだ!」


「それじゃあ、それが日番谷君の本来の姿だって言うの?!」


「昨日もそう言っただろ?!」


思ってたよりすごい剣幕で言い合いを始めた二人。

そう言えば彼等は幼馴染みなんだっけ、とか至極どうでも良いことを考えながら、お茶を一口飲む。

抑えていた冬獅郎の霊圧が乱れてきていることに焦りを感じて、現実逃避しているとも言う。

そろそろ口挟まなきゃまずいだろうか。


「だって…だって…それじゃシロちゃんじゃ無くなっちゃう…私の知ってる日番谷君じゃ無くなっちゃうんだもん…」


遂に泣き出した雛森さん。

ごめんね、冬獅郎。

やっぱり話振るんじゃなかったかも。

一抹の後悔を覚えながら、彼等に視線を移すと、冬獅郎が彼女の頭を撫でて慰めていた。


「お前は姿が変わったら心まで変わるって言うのか?記憶まで無くなるって言うのか?俺はお前との記憶はちゃんと覚えてる。
どんなに状況が変わっても幼馴染みには違いねぇだろ?」


優しくなった口調と、安心させるように選ばれる言葉。

なんでか、こっちまで胸が暖かくなる。

冬獅郎の霊圧も落ち着いて、懸念事項は無くなった。

じゃあ、執務でもしますか。

冬獅郎の方は大丈夫そうだから、乱菊の方を。


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