Chapter12 〜葛藤〜

「そう言えば、まだ何かすんのか」
冬獅郎の問いに、私はふわりと笑みを浮かべる。
「昨日の月読、覚えてる?」
「あぁ」
頷く彼に、話を続ける。
「あれは具象化じゃなくて具現化なの。
月読と天照は元々別の魂を持った神様。
それを具象化じゃなく、具現化状態で屈服させたら、魂の結び付きが強固になって、引き出せる力が大きくなったんだよね」
「…そう、なのか」
何処と無く困惑気味の冬獅郎。
また途方も無い話をするのかと身構えている。
大正解なんだけど。
「そう。だから月読や天照みたく個の存在、つまり魂を与えて屈服させれば、彼等の力はより強くなる。でも、月読みたいに反発しない可能性は零じゃ無い。だから、やるかやらないかは任せるよ」
「…元々同一の魂から生まれた存在に別の魂を与えるのか」
いまいち理解出来ないのか、眉を寄せている冬獅郎に補足する。
「魂って言っても別の意思を持つ者を入れるわけじゃ無いよ。
元々魂って言うのは個を定義するだけの物で、最初はそこに意思や心は存在しない。
元々最初に創ったのは私だから、歪みが生じる事は無いしね」
「今さらっとおかしな事言わなかったか?」
「あ、言ってなかったね。私創世神の生まれ変わりだったよ」
「………」
眉間の皺を深くして、何かを考え込む冬獅郎。
私は彼に神として見て欲しいわけじゃないのだけれど。
「私は私だよ。只、忘れてた記憶がそうだっただけなんだけど、ね」
「…只の魂魄が神に触れて良いのかよ」
そう告げた彼の翡翠の瞳は、揺れている。
「駄目ならもう消滅してるよ」
「そういう問題か」
呆れ交じりに溜息を零す冬獅郎にくすと笑う。
「言ったでしょ?私の力は境と理を捻じ曲げる力だって。そんな意味の無い境界、もう壊しちゃってるから心配しないで?」
「…お前、結構馬鹿なのか?」
「酷い。そうでもしなきゃ私此処には居られないよ?居なくていいなら…帰る、けど…」
自分で言っておいて、胸が軋んで。
すっと彼から目を逸らした。
多分、正面から拒絶される事が耐えられなかったんだ。
冬獅郎が小さく息を吐くのが聞こえて。
ずきりと胸が痛んだと思ったら、腕を掴まれて引き寄せられる。
「誰がそんな事思うかよ」
「…人って自分と違う存在を怖がるものでしょ?」
「何今更くだらねぇこと気にしてんだ」
穏やかな声に少し安堵して、そのまま身を預けようとして。
此処が何処だったか思い出す。
「冬獅郎。人いっぱい居る」
「それも今更だろ」
そんな事言ったって、視線が痛いのだ。
訴える様に彼を見上げると、渋々ながら離してくれて。
見計らった様に、朽木家の料理人達が、夕食を運んで来る。
皆がそれにつられる様に集まってきて。
「玲、ちょっとこっちに来なさい」
そのまま冬獅郎の隣に座ろうとすれば、ひょいと乱菊に抱えられた。
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