Chapter12 〜葛藤〜






「何をしておるのじゃ」


的の向こう、遥か遠くで渦巻く氷と桜の応酬に、元流斎が息を吐く。

霊子集束装置まで扱える様になった彼等の戦いには、霊圧制御を終えた総隊長と言えど手を出すのは厳しい。


「止めたほうが良い?」


視線だけで、それなら第三解放ぐらいしてもいいよねと訴えてみると、元流斎は首を振った。


「良い。それよりも、霊圧の制御は出来ておるようじゃの」


「霊圧抑えるよりずっと難しいコントロール覚えさせたからね。人に響かないようにするぐらい、訳ないと思うよ」


「左様か。ならば帳消しじゃの」


何処からともなく書類を取り出して、手元で炎を灯すお爺ちゃんは、いつの間に常時解放になったのだろうか。

それよりも、彼の言った言葉に首を傾げる。


「他の隊士達の耐久性向上も契約に入ってなかった?」


「元より、そこまで無理をさせるつもりもないわ。隊士達の訓練は各隊長が当たれば良い。この修行でコツは掴んだじゃろうて」


「…お爺ちゃん、何か優しくなったね?」


「儂はお主にきつく当たった記憶など無いがの」


その言葉に一瞬呆けたのかと思ってしまった私は悪くないと思う。


「何時も凄く怒るじゃない?」


「お主が呼び方を改めんからであろうが」


確かに。

鬼事から此方、怒られたのはお爺ちゃんと呼んだ時だけだった気がする。

なんだかんだで現世行きも霊印うつことで許してくれたし、敬意など全く払っていない私に文句も言わない。


「ごめん。これからは総隊長って呼ぶね」


「何を今更。じゃが、お爺ちゃんは止めい」


「じゃあお爺様」


「良かろう」


元流斎先生が丸くなった。

何故か妙に感動していると、彼の視線が時計へ向く。

前回無ければ自分以外の人が時間が分からないことに気付き、壁に取り付けた大時計。

その針は既に亥の上刻(午後9時)を指していた。



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