Chapter12 〜葛藤〜






「そろそろ解散させねばの」


「じゃあアレ止める?」


「斬魄刀以外での」


そんな事言われても。

氷輪丸の千年氷牢を千本桜の吭景が砕き、竜霰架を白帝剣が受け止める、あれを。

唯の鬼道であれを吹き飛ばすには無茶があり過ぎる。


「では、神道をお使いになれば良いではないですか。正しい詠唱なら、主はもうご存知のはずです」


沙羅と髪飾りの擦れる音がして、わたしの隣に十二単を纏う絶世の美女が現れる。


「…天照」


「臆することは御座いません。今の彼等ならば、恐らく、防ぎ切れましょう。
そもそも、主の言葉を聞かぬ奴等が悪いので御座いましょう?」


ゆったりと、然し凛然と微笑む彼女の渦巻く怒りが伝わってきて、私は冷や汗を滲ませる。

彼女は、私以外にはかなり強硬派だ。

私に心酔しているとも言う。

何故だかは知らないが。


「そうね、慣れておくのも良いかも。なら、離れて見ててね」


「仰せのままに」


すと頭を下げる天照から少し離れ、私は目を閉じる。


「東の守護者水の化身たる青き牙
西の守護者風の化身たる白き爪
南の守護者炎の化身たる朱き翼
北の守護者地の化身たる黒き躰」


四神を現す言霊を唱えると、霊力が青白朱黒に色付いて、辺りに突風を巻き起こす。

手掌に集束する力は、鬼道の比ではない。


「今此処に隷属し、我が敵を封じよ。神道の一、四聖鎖縛」


発動と同時、術者の四方に青龍、白虎、朱雀、玄武が一瞬姿を現して、その形を鎖へと変え、光よりも早く空を駆ける。

急に縛られ、強制的に霊力を押さえこまされた彼等が驚きの声を上げ、直後轟音。

私は現場に瞬歩で移動する。


「解」


特殊な霊印を組んで術を解くと、翡翠の瞳が恨めしげに揺らぐ。


「今日はもう終わり。戻ろ」


「お前…いきなり霊圧抑える鎖で縛っといてそれかよ」


不満を零す冬獅郎と。


「…あれは月読を封じた術か」


興味深げに此方を見遣る白哉。

彼は今日も揺るがない。

最近、若干天然なのかと思う私は間違っては居ないはず。


「主の制止を無視した貴方方が悪いのです。苦情は受け付けません。
それと、主の心配は無用で御座います。
あれは神道。神力を持つ者にのみ許された力。神力を取り戻し、完全詠唱出来るようになった主に反動は御座いません」


すらすらと聞かれない事まで話す天照は先読みでもしているのだろうか。


「そもそも、貴方方は「はい、天照。戻ろうね」」


この勢いのまま放って置くと普段の恨み辛みまで当てつけそうなので、泡沫の力で具現化を拒絶する。

少し寂し気に姿を消した天照に心の中で謝りつつ、呆然としている冬獅郎の前で手を振ってみる。


「…あれが天照か?」


「うん。たまに暴走するの」


少し具現化について考えている様子の冬獅郎と、歩き出した白哉を追う。

彼にも話した方が良いかなと苦笑しながら。


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