Chapter12 〜葛藤〜






「そうか」


白哉の部屋で、冬獅郎に説明した内容と同じ事を話すと、彼は一つ頷いた。


「時間もある。やってみれば良かろう」


簡単に承諾する彼が本当に理解しているのか怪しかったが、目を瞬かせると彼の雰囲気が緩んだ。


「其方は意味の無い事はさせぬであろう」


「そうだけど…自分の斬魄刀だよ?もう少し渋る物でしょ?」


「そうか」


何処と無く疑問符が付いている気もするけれど、いつもの返事とそう変わらないそれに、私は追求を諦めた。

良いなら、良いか。

多くを語らなくても理解してくれる彼の側は心地良いから。

身を寄せると安心する。

この場所は酷く気が緩む。

乱菊にはああ言ったけれど。

本当に形は違わないんだろうか。

気持ちの形なんて見えるものじゃ無いから、知り得ないけれど。

無性に甘えたくなる彼は、多分他とは少し違う。


「風呂は浸からぬのか?」


彼の言葉で私は大浴場の霊圧を探る。

各部屋にはシャワー室しか無いから。


「…人の多いお風呂は苦手」


返ってきた複数の反応に首を振る。

お湯に浸かるのはのんびり出来るから、好きなんだ。


「そうか。夜一の事が根付いておるのか?」


「…乱菊は同じ事しそうだね」


否定も肯定もしない。

トラウマとまでは言わないけれど。

確かに誰かと一緒に入る事を躊躇してしまうのは事実だから。


「…人に触れられたく無いのか」


「白哉?」


静かに零れた言葉。

見上げると、彼の綺麗な顔が僅かに歪んでいた。


「其方は行ったであろう。重さは違うが形は違わぬと。ならば何故、こうも無防備に私の側にいるのだ」


零れ落ちる様な言葉は、何処か苦しげで。

胸がずきりと痛みを訴えた。

彼の表情に、言葉に、胸が痛む。

それが、他の人と彼等の違い。


「側に居ると安心するから、心が温かくなるから。ねぇ白哉、そんな顔しないで?胸が、痛いよ」


拒絶が怖くて手が伸ばせないのは、彼等だけ。

今までは、私の心が彼等に与えられたものだからなんじゃ無いかって思ってた。

でも、違う。

壊れるからじゃ無い。

只、嫌われたく無いんだ。

これが人を想う気持ち、なんだろうか。

まだ、分からない。

違う、分かりたくないんだ。

認めてしまえば、私はこの人から離れる事が出来なくなるから。

そんな事、私には許されないから。


「玲…」


そっと頬に触れられる手に目を閉じる。

今の私には、許容する事しか、出来ないから。


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