Chapter12 〜葛藤〜

結界の向こうで、氷と氷がぶつかっている。
其処から少し離れて、桜の刃が渦巻いている。
今更、恐怖なんて、持っちゃいけないんだ。
最初からわかってた事なんだから。
突き放す事なんて、出来るわけ無いんだから。
「玲?どうかしたの?」
すとんと側に現れた乱菊が、私の表情を見て、黙って抱き締めてくれた。
「何かあったの?」
「ううん。少し、感傷に浸ってた…かな」
慰める様に撫でてくれる手が温かい。
何の、と聞かないのは、彼女の優しさ何だろうか。
「無理しなくて、良いのよ。あんたは、色々背負い過ぎてるんじゃない?」
「そんな事…「あるわよ。人はね、他人の心まで背負い込めるほど強くないの。悩むなら、自分の事で悩みなさい」
「どうして?」
「あんた、顔に出てるわよ?」
そう言って笑いながら、くしゃくしゃと頭を撫でる彼女を見て、心の声が、口から零れ落ちた。
「ねぇ、乱菊。例えば私の命が残り少なかったとして。傷付けるって分かってて…それでも誰かの側に居たいって思うのは、我儘かな」
言葉を、止められなくて。
これを肯定されたらどうするかなんて、考えてさえいないのに。
言ってしまった事の後悔で顔を俯かせた。
「馬鹿ね」
すっと頬に手が添えられて。
俯いた顔を上げさせられる。
「そんな訳、ないじゃない。あんた、そんな事隊長に言ったら怒鳴り飛ばされるわよ?」
「う、冬獅郎に怒鳴られた事、無いもん」
「あら、羨ましいわね。私なんか殆ど毎日怒鳴られてるのに」
むっと口を尖らせる乱菊は、何時ものお茶目な彼女で。
何だか悩んでた自分が少し、馬鹿らしくなった。
「ねぇ乱菊」
「なぁに」
「市丸ギンは、心まで藍染に渡してはいないよ」
告げると、彼女の瞳が動揺に揺れて…そして静かに閉じた。
「そうだとしても、何も変わらないわ」
落ちてきた声は、静かだった。
「変えるよ。救いのある人は、殺さない」
「ギンに救いがあると言うの」
「うん。大丈夫。保証する」
自信を持って微笑むと、彼女の腕の力が強くなった。
「私、知りたいの。彼奴は何であんな事したのか、何であんな事言ったのか」
「本人の口から聞こう?私が言うべき事じゃ無いから」
「っーそう、ね…」
肩を震わせる乱菊を抱き締め返して、金の髪を撫でる。
何時も白哉がこうしてくれると、私は安堵するから。
彼女もそうだと良いなと思いながら。
その後、落ち着いた乱菊の魂魄を修復して、鬼道演習場所に戻った。
伸び悩んでいる人達にコツを教えたり、実際にどれ程変わるのか実演したりしながら。
私は遠くで派手な戦闘を繰り広げる二人の死神に意識を向けていた。
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