Chapter14 〜仮初〜





翌日。

玲は倉庫街の一角にいた。

勿論、冬獅郎を連れて来るわけには行かないから、一人で。


強固な結界をすり抜けて、階段を降りて地下に進むと、騒がしい声が聞こえてきた。

けれど、広い空間に出た途端、皆一様に口を閉じて目を見開く。


「あら、思ったより元気そうだね、一護。それと、初めまして。仮面の軍勢の皆さん。瑞稀玲です」


ぺこりと頭を下げた途端、二人の女性が斬魄刀で斬りかかってくる。

金髪ツインテールの小柄な女の子、猿柿ひよ里と、緑髪にゴーグル、少し奇怪な服装の女の子、久南白。

それをとんと指で受け止めて、首を傾げる。


「なっ…なんやお前は!」


「嘘ぉ!嘘嘘嘘だぁ!」


さっと青褪める猿柿と、受け入れられない久南。

刀を少し押し返して、するりと間を抜けると、もう彼等は攻撃はしてこなかった。

唯、警戒は強くなったみたいだけれど。


「えっと…敵対しに来た訳じゃないんだけど…呼び鈴も無かったし。結界も壊れてないよね?」


そう、大柄で寸胴な男、有昭田鉢玄に問い掛けると、彼はびくりと肩を揺らしながらもこくりと頷いた。


「敵やないんやったら、相応の証拠見せんかい!」


金髪オカッパの男、平子真子が声を荒げる。

玲は困って一護を見遣った。


「あ!平子。この人は死神で、滅茶苦茶な力持ってて…「こら一護?それ、フォローになってないよ」」


更に警戒を強めた様子の仮面の軍勢に、玲は重い溜息を付く。


「貴方達、藍染を倒したいんでしょう。力貸そうかと思ったんだけど、要らない?」


「誰が要るか!」


背後から聞こえた拒絶の声に、ふと息をついて、一護に手招きする。


「じゃ、一護。約束通り霊圧上げてあげる。おいで」


「なっ!?霊圧上げるやと?!」


「部外者は黙っててね」


そう告げて、一護の額に指を当てる。

霊圧を同調させて、魂魄を補強し、彼の異常に高い潜在霊圧まで引き上げて、安定させる。

出来る限り制御できる様に、彼の精神世界にまで干渉して。

途端、轟っと跳ね上がる一護の霊圧。

目を見開く仮面の軍勢達を横目に、全開で霊力を垂れ流す一護の頭を小突く。


「ほら、早く制御する!」


「はぁ?!制御って何だよ?!」


「何って…あーもう…」


溜息をついて、霊力を消費し、潜在霊圧制御装置を創造する。


「はぁ?なんやあれ!何も無い場所から…ブレスレット…?」


それを一護の腕にそれを嵌めると、暴走していた霊圧があっという間に収まる。


「はい、数字は」


「え、っと…67です」


「まぁ、私が直接手を貸したんだし、そんなものだよね。とは言え、制御って何とか言ってる貴方に100になんて出来るとも思えないし…」


「霊圧制御って何のや!今あんた何した?!教え!」


ずいっと顔を近付けてくる猿柿をぽんぽんと宥めつつ、考える。

最初から精神世界に干渉までして霊圧制御を手伝ったのにまさかの67。

そう言えばこの子、元々感覚で霊力使ってるんだった。

どうしようかと考えていると、平子と目が合った。

あぁ、この子は荒療治で良いんだっけ。


「よし、一護。選択肢あげる。ちまちま霊圧制御するのと、死ぬ気で一気に強くなるのどっちがいい?」


「え?「んなもん、後者に決まっとるやろ」」


「そう?じゃ、それ一回外そ」


「えぇ?!つか平子!勝手に決めんな!」


「お前の性に合うた方選んだったんやろが!」


彼等が言い合いして居る間に、制御装置をパチンと外す。

すると再び跳ね上がる霊圧。


「うぉあ?!」


「一護。月牙でも何でも撃ちまくって、霊力使い切りなさい」


「「「はぁあ?!」」」


仮面の軍勢さん達が何か叫んでいたけれど気にしない。

一護自身キツイのか、その場から離れて馬鹿みたいに大きな月牙天衝を撃ち始める。

威力は今までとは桁違い。

けれど、どうにもこの場所が持ちそうになくて、対面に移動して霊圧で相殺する。

漸く霊圧を消費し切って、その場に倒れた一護を見て、はぁと溜息を零した。


「お前…あれ全部相殺したんかい…」


「じゃなきゃ、生き埋めでしょ…」


疲れを訴える身体を引きずって、階段の方へと戻る。


「お、おい!」


「明日、また来るから。一護お願いね」


「…分かった」


仕方なさそうに頷く平子。

その隣に猿柿が来て、有昭田に視線を向ける。


「…ハッチ、結界開けたれ」


「はいです」


「あら、ありがと。ちょっとキツかったから助かる」


「ふん!明日覚えとけよ!ウチの暇潰しの相手気絶させた礼したるわ!」


「そう?なら次は虚化しておいでね」


ふわりと笑みを残して、玲は瞬歩で消えた。


「何でアイツ、ウチ等の事知ってんねん…」


「知らんわ。けど、敵やない。それが分かったら十分や」


猿柿の言葉に平子が曖昧な言葉を返す。

出来れば明日、説明してくれよと心の中で呟きながら。

一護の急激に上がった霊圧と、質の変わった力を見遣りながら、溜息を零した。


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