Chapter14 〜仮初〜






「待って下さい。それに触れないほうが良いです。少し待つのが賢明だと思います」


「…そう、やね。あの子こっちの1分を自分が創った空間の一日にする言うとった」


「あの一護君に渡した制御装置は一日一つしか創れないとも言っていましたねぇ」


「私らの数は8人。真子が言うた言葉鵜呑みにして、ほんまに全員の霊圧上げる言うんやったら…十分程で戻って来る筈や」


ちらりと腕の時計を見遣って、時間を計る矢胴丸。


「…おかしな奴っちゃな」


ぽつと呟かれた平子の言葉に、矢胴丸が噛み付く。


「元はと言えばあんたの所為や、真子」


「何でやねん!俺何もしてへんやろが!」


「あの子に俺等の霊圧も上げ言うたのあんたやろ?」


「せやないと一護の修行にならんやろが!」


「そうかも知れんけど、会うて二回目の女の子に無茶させる理由にはならへんやろ」


「ほなどないせい言うねん!俺にここ飛び込んで連れ戻してこいとでもいうんか?!」


「ああ!そないしい!こんな滅茶苦茶な力使わして、無事な保証もあらへんねんから!」


「あの…お二人共…」


「「何や!!」」


「十分…経ちました…」


有昭田の言葉にはっと腕の時計に目を落とし、歪んだ空間に向き直る平子と矢胴丸。


「ほら見てみい!あの子、空間に流されたんちゃうやろな!」


「俺が知っとる訳ないやろ!」


「煩い!とっととあの子探して連れ戻して来ぃ!」


「うっわ何すんねん!危な!止めんかい!」


そんなやり取りをしている二人の前で歪んだ空間が収縮して、消える。

きょとんと目を瞬かせる彼等の前には、何事もなかったかの様な玲が居た。


「えっと…仲良しだね?」


「「違うわ!!」」


声を揃えて否定する平子と矢胴丸に、適当に相槌を打ちながら、玲は八つの潜在霊力制御装置を手渡す。


「それは魂魄を自動で補強して、潜在霊圧まで霊圧を引き上げてくれる物。それに、上がった霊圧も、完全に制御できるまで抑えててくれるから、昨日の一護みたいにはならないよ。
視界の隅に浮かぶ数字が100になったら制御完了だから外しても良いけど、それまでは絶対外さないでね。理由は…昨日の見てたよね?」


こくりと頷く平子と矢胴丸に微笑んで、玲は階段の方へと向かう。


「何でこんなんしてくれるん?!」


少し離れた玲を呼び止める様に叫ぶ矢胴丸に、くすと笑って。


「藍染は私に取っても敵だから。倒せる可能性を持つ者は多いほうが良いの」


「駒にでもするつもりなんか?」


「まさか。私は選択肢を上げただけ。今のままじゃ貴方達は虚化しても十刃にすら勝てないから」


「何やと?!」


苛立ちから声を荒げる平子に見せつける様に、玲は無詠唱で白雷を放つ。

華奢な指先から迸った青白い閃光は、岩山を幾つも爆散させ、遠くで一護が振り下ろした斬月を弾き飛ばして漸く止まった。


「な…っ?!」


「玲さん!!危ねぇだろ?方向考えてくれよ!」


斬月を空中で握り直した一護が、玲に不満の声を上げる。

彼は、たかだか一桁の破道があれだけの威力を持つ事に驚いている様子は無い。


「ごめん、わざと」


「阿保か!!」


一護の感情の揺らぎに合わせて、揺れまくる巨大な霊圧を見遣り、平子は溜息を吐いた。


「分かった、乗ったるわ。お前の挑発」


真っ直ぐ見据えてそう告げると返ってくるのは無邪気な笑み。


「そう、良かった。ならまた、顔出すね」


そう言い残して消えた玲を見送ってから、平子は再び溜息を吐いた。


「調子狂うわ」


ぽつと呟かれた言葉は、虚空に消えた。



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