Chapter15 〜胎動〜

「じゃあね。一護、宜しく」
「なんや帰るんかい。しかもそれ、もう来おへんみたいな言い方やぞ」
引き留めるような平子を振り返って首を傾げる。
「だって、あまり来て欲しくは無いでしょう?」
そこへ猿柿が噛み付いてきた。
「なんやねん!散々引っ掻き回しといて逃げるんか?!腰抜け!ええ加減にせぇや!お前見てると腹立つねん!」
「うん、だからもう来ないよ?」
「ちゃうわ!一人辛気臭い顔して消えるつもりか!あんたが何もんか知らんけどな!ウチはあんたを認めへんとは言うてへんぞ!」
遠回しに、感謝してるとでも言っているんだろうか。
「そう、ありがと」
ポンポンとツインテールの間を撫でると、猫のように威嚇する猿柿の制御ブレスに、通信機能を追加する。
「寂しくなったら、これで連絡頂戴?」
「誰が寂しなんかなるか!付け上がるんも大概にせぇや!」
「あ、怪我したらこれ飲むと良いよ。回復薬だから」
序でに薬の入った小瓶を創り、彼女に手渡す。
文句を言いつつも受け取ってくれる猿柿に微笑んでから、外に出た。
嬉しい様な悲しい様な、複雑な心を持て余しながら。
ああ言えばどんな反応が返ってくるかなんて分かりきっていた事。
ただ一つ、追い付いてくれないのは、立場にも力にも似合わない、この脆い心なんだ。
目を閉じて、この街で強くなろうと足掻く存在を感じ取る。
そんな彼等の周囲の時を少し弄って、空を見上げた。
もう、あまり時間は無い。
藍染は既に、準備を終えている。
唯の知人同然の彼等に今私が出来ることは…
力を蓄える時間を、少しでも長く、延ばしてあげる事だけだから。
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