Chapter15 〜胎動〜





広い公園の、一本の木に背を預けていた俺は、直ぐそばに現れた微かな霊圧に目を開いた。

今の俺の霊圧抑制率は99.99。

そこらの虚とそう変わらないレベルの霊圧。

序でに、このブレスレットに付いていた霊圧遮断結界も使って完全に霊圧を抑えている。

それでも簡単に俺を見つけ出して見せたこの女はやっぱり普通じゃねぇ。


「お待たせ。結界まで使わなくたって良いじゃ無い?おかげで探すのにちょっと手間取ったよ」


「どうやって捜したんだ?」


「ん、そのブレスレットね、神力宿ってるんだよ。それを追ったの」


その言葉で何となく理解した。

神力なんてもんは此奴しか持って無いはずだ。

それの力を追うなんざ此奴にしか出来ねぇって事なんだろう。


「そうかよ…」


呟いて、次の言葉が出て来ずに黙り込んだ。

目の前で微笑んでいるこの女を視界に入れた途端、疑問が何もかも吹き飛んじまったんだ。

雰囲気が、澄んだ瞳が、此奴に他意など無いと知らしめる。

本能が、優し過ぎる此奴の性格を感じ取る。

何故なんて意味の無い問答は、必要なかった。


「で、聞きたい事って?」


首を傾げながら側に寄って来る女を、抱き締めたくなった。

が、出来なかった。

伸ばそうとした手は、此奴に拒絶される事を恐れる心が、止めた。

意味が、分からなかった。


「どうしたの、グリムジョー」


代わりに華奢な手が伸びて来る。

剣を振るうはずのそれなのに、傷一つ無い綺麗過ぎる手。

それが、するりと俺の頬を撫でて、髪を梳く。

それだけで、荒れていた心が、水を打ったように鎮まった。


「…何でもねぇよ」


そうは言いつつ、子供扱いしてる様にしか見えない此奴の手を如何しても振り払えない。

馬鹿にすんなと払いたいのに、手が動いてくれねぇ。


「そう?あ、そうだグリムジョー。もう一つ、お願いしていい?」


「なんだ」


髪を梳いていた手を止めて、ひょいと女が取り出したのは小さな丸い珠。


「出来ればで良い。虚夜宮の回廊操作機能を停止させたいの。これは遠隔操作出来る爆弾…みたいなもの。十刃なら、メインシステムの場所とか、分かるかなって」


確かに場所は分かる。

が、あの場所の直ぐ近くには、統括官二人と藍染がいる王座の部屋だ。

難易度は前の比じゃねぇ。

俺の表情を読み取ったのか、女はやっぱり良いやとそれを懐に仕舞った。


「貸せよ。やるだけやってやる」


「絶対見つかっちゃ駄目だよ?後、少しだから」


仕舞ったそれを再び取り出して、俺に渡しながら念を押す。

正直、藍染が本気で気付いてねぇはずはねぇ。

が、確証も無いのか、手も打っては来ない。

それを、この女も分かってんだろう。


「後、どれぐらいだ」


「多分…三日」


多分という割に、確信を持った言い方に、ふと笑う。


「なら、三日後には暴れて良いんだな?」


「あ、死神相手にしちゃ駄目だよ?一護なら、ちょっと力試ししても構わないけど」


「あん時のオレンジ頭か?多少は強くなったんだろうな」


「まぁね。でも、殺しちゃ駄目だからね?」


「わぁったよ」


此奴が何を考えて、どういう計画を立てているのかなんて俺には分からねぇ。

が、聞き出そうとも、逆らおうとも思えねぇのは、あの時の力が俺の奥底に根付いてるせいか。

それとも、この女が周りに与える、妙な安心感と力を貸してやろうと思わせる雰囲気のせいか。

この時はまだ、分からなかった。


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