Chapter15 〜胎動〜

グリムジョーを見送って、戻ろうとすると途中で氷輪丸に捕まった。
「主が困っている」
端的に要件を伝える翡翠眼に蒼髪の青年に頷いて、瞬歩でホテルのベランダへ戻る。
と、泣いている雨を前に見た事も無い様な困り顔で慰めようと頭を撫でる冬獅郎が。
「雨、どうしたの」
「お姉ちゃん!」
声を掛けた途端、ぎゅうっと抱きついて来る雨を撫でつつ、溜息を零す冬獅郎を見遣る。
「ごめんね?」
「せめて一言言って行け」
一言、文句を言ってから、徐に立ち上がって珈琲を淹れる冬獅郎は、現世に馴染みすぎている様に見えた。
「あ、私も」
落ち着いてきた雨を抱き上げながら、そんな言葉を投げると。
取り出したマグカップに珈琲では無く紅茶のティーパックをセットする彼は、主夫みたいだ。
苦笑しつつ、テレビを付けて、ぶすっとしているじん太の頭を撫でると、ふいと顔を背けられる。
「雨ちゃんとじん太君は何飲む?」
「「お茶」」
問うてみると、見事に即答する彼等は、緑茶しか飲んだ事が無いのかもしれない。
あの店だし。
鉄裁さんだし。
あり得る。
聞いていたらしい冬獅郎が、きっちりお茶と紅茶と、自分の珈琲を持って来るのが、なんとも微笑ましいのだけれど。
時刻は午前六時。
まだ出掛けるには早いし、朝食の準備も出来ていない時間帯。
「今日、どうしようね?」
呟くと、冬獅郎に呆れ交じりの視線を向けられた。
「何も考えずに預かったのか」
「まぁ、取り敢えず、三十時間預かってれば良いかって」
「ならば、遊園地とやらに行ってみたい」
「遊園地?!」
「本当?!」
ちゃっかり寛いでいた氷輪丸の提案に子供達が食い付く。
行った事が無いのだろうか。
まぁ、あの店だし。
仕方ないかもしれないけれど。
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