Chapter15 〜胎動〜

「雨とじん太は良いとして、氷輪丸義骸に入れるの?」
「創れぬのか」
「出来るけど…その氷」
彼の手足と首元は何時も氷に覆われている。
流石に現世をそんな格好では歩けない。
「…………消せば良いのか」
一頻り悩んで、苦渋の選択をしたらしい氷龍の化身に、くすりと笑って頷く。
彼の容姿はそのままに、人の手足に現世の服を着せた義骸を創ると、躊躇いながらもそれに入る氷輪丸。
斬魄刀でも義骸に入れるんだなと少し感心していると、氷輪丸が苦悶の表情を浮かべる。
「氷が出せぬ」
「…やると思って霊力抑える術、仕込んでおいたからね」
「これでは、溶けてしまうでは無いか」
「大丈夫。誰が創ったと思ってるの」
「信用ならぬ」
「そう。氷輪丸、ちょっと魂抜いてあげようか?誰のお陰でそうやって実体保ててると思ってるの?」
「…ぐ…」
流石にそれは嫌なのか、項垂れて黙り込む氷輪丸。
ちょっと言い過ぎたかなと反省しつつ、紅茶を一口飲む。
「で、行くのか」
「そうだね。雨とじん太嬉しそうだし」
「朽木と行ったとか言ってただろ?」
「うん、でも前に行った時はジェットコースターとか乗れなかったんだ。白哉が、信用ならないとか言って」
ちらりと冬獅郎を見遣ると、少し青褪めていた。
「………そう、か」
やっぱり死神は現世の人間が創り出した超加速系の乗り物は嫌いなんだろうか。
車も乗ろうとしないし
(死神化して走る速度は時速200kmを超える)、
電車も嫌がるし
(遠くへ用事があれば瞬歩で移動する)、
飛行機なんて以ての外
(一度尸魂界に戻って座軸を変えた方が早い)。
私が平気なのは、現世の膨大な情報をある程度把握しているからで。
身を任せても、余程のことがない限り安全だと知っているから。
よく知りもしない彼等にとっては、未知の物と同義なのだ。
「冬獅郎、エレベーターは乗れるじゃない」
「…あれも慣れるのに大分かかった」
「そう?まぁ、無理しなくても良いけど。お留守番してる?」
「お前、氷輪丸と餓鬼二人、一人で手綱握れんのか」
そう言えば、子供達二人は未だしも、氷輪丸は冬獅郎が居ないと殆ど言うことなど聞いてくれないんだった。
「あは。やっぱり保護者同伴で…」
「都合の良い奴だな」
何処か投げ遣りな言葉を放つ彼に、触れようとしたけれど。
出来なくて。
「主でしょう?」
代わりに、笑顔を作って誤魔化した。
冬獅郎は頭が良いから。
気付いてるんだろうな。
私がしようとしている事が、どういう事か。
「分かった」
仕方なさそうに立ち上がった彼の瞳は揺れていて。
私はまた、笑顔を作ってみせた。
多分普通の人は気付かない。
でも、人一倍私の側に居てくれた彼まで、騙せるとは思ってはいない。
それでも、強がって見せるのは、私の意地なんだ。
- 243 -
<*前><次#>
栞を挿む
ALICE+