Chapter16 〜虚圏〜





当然の様に後ろを付いて来る女に、問いを投げる。


「で、何処で寝るつもりだ、女」


思ってもいない問いを。


「えっと。泊めて欲しかったんだけど…駄目?」


しゅんと肩を落とす女を、引き寄せたくなるのは何故だ。

この女の表情一つ、言葉一つで、自身が揺らぐ。

胸が軋み、暖かくなり、望みを叶えてやりたいと思わせる。

これは、何だ?


「…好きにしろ」


部屋に着いてベッドに腰を下ろすと、当たり前の様に隣に座る女に戸惑う。


「…おい女。まさか…」


「一緒に寝よ?」


澄み切った琥珀の瞳に他意は無い。

単純に、添い寝してくれと言っているのか。

無邪気過ぎて、頭痛がする。


「俺はソファで寝る」


「あ、ごめんなさい、じゃあ私がそこで寝るから」


何処か悲しそうに瞳を揺らす女に、胸が軋んだ。

ずきりと、穴の開いている筈の場所が、痛むような錯覚を覚える。

掻き抱きたい衝動に駆られ、立ち上がりかけていた女の腰を引き戻して後ろから抱き締めた。


「ウル、キオラ…?」


「何もしない保証などしないが…それでも隣で眠ると言うか」


「うっ…何、するの?」


「知らんと言うのか。簡単に男と共に寝ようとするというのに」


腕を緩めて、此方を向かせた女の瞳は、揺れていた。

懺悔と、迷いと、底知れぬ恐怖に。

女が何に恐怖しているのかは知りはしない。

だが、知らぬのならば、無理強いなどし無い方が良い。

何故かそう思った。


「…仕方ない」


「ん?」


「共に寝るだけにしてやる。今はな」


首を傾げる女をベッドに放り投げて、自分も横になる。

じっと見上げてくる琥珀の瞳を無視する様に目を閉じた。

此奴の瞳は理性を乱す。

この状況では毒にしかならない。

恐る恐る胸元に寄ってきた温もりに、常に感じている虚無感が薄れていく気がして。

妙な安心感に包まれながら、眠りに落ちた。


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