Chapter16 〜虚圏〜

眠りに落ちたルキアに、一人の十刃が忍び寄っていた。
「ほう、認識同期では圧倒的だった戦闘。もしかするとと思って来てみれば…やはり、肉体に過負荷の掛かる力だった様だ」
静かに刀を抜くのは第七十刃、ゾマリ・ルルー。
「最早貴方に名を名乗れないのが残念だが、それも定め。逝きなさい死神」
そこへ、一つの人影が現れる。
「何者です」
問いかけても、彼は答えない。
その場の冷気に、銀白風花紗が揺れる。
「その羽織、隊長格とお見受けする。私は第七の十刃、ゾマリ・ルルー。さぁ、名乗りなさい」
「答えるまでも無い。兄等の敵だ」
静かに答える白哉は、ちらりとルキアを見遣る。
「私も一つ問いたい。あれと戦ったのは兄か」
「私では無い。だが、止めはこれから差すところだ」
「そうか」
納得した様にすと目を閉じる白哉は、腰の刀に手を掛けた。
「断っておきますが、そこの死神を助けようというのならば無駄な事です。止めておきなさい」
「解せぬな。無駄とはどういう意味だ」
瞬間、白哉の姿が瞬歩で消える。
「こう言う意味です」
キンと鯉口を切った途端、相手の気配が二つに分かれたのを感じて瞬歩で離れた。
「私の響転は十刃中最速でしてね。それに少しステップを加えて編み出したのが、この双児響転は一種の手品の様なものです。手品とは相手を驚かせる物ですから、目で追えなかったからといって恥じる事はありませんよ」
淡々と告げるゾマリに、白哉はふと息を吐く。
「恥じるのは貴様だ。この私に早々に手の内を明かすとは」
白哉は瞬歩で再び相手の背後を取る。
瞬時に斬り倒し、背後に現れた双児響転による分身も斬る。
「残念。双児響転は二体までではありませんよ」
「だろうな」
羽織の内側から、白雷を放つ。
一条の雷に収縮された破壊力が、その分身を消し飛ばし、更に現れた二つの気配の片方の刃を受け止め、もう片方を身体を捩って避け切った。
「ほう、五体の分身の攻撃を全て受け流すとは。流石隊長格と言った所ですか」
「驕るな十刃。私と貴様が同格とでも思ったか」
挑発するかの様に、白哉が呟く。
その挑発に乗った十刃が、刀を宙に浮かせた。
「成る程。どうやら傲岸不遜が貴方の性分の様だ。その傲慢さ、その身の内まですり潰して差し上げましょう。鎮まれ呪眼僧伽(ウルへリア)」
斬魄刀が捻じ曲がり、ゾマリの身体が多くの目に覆われた達磨の様な姿に代わった。
その変形さえ、白哉は黙って見つめていた。
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