Chapter17 〜決戦〜





その頃狛村と檜佐木は東仙と退治していた。


「東仙隊長お礼に上がりました」


檜佐木の言葉に、東仙がぴくりと眉を寄せる。


「皮肉のつもりか、檜佐木」


「いいえ、今までの全てのご教授のお礼です。貴方に教わった技の全てを持って、俺は貴方の目を覚まさせてみせます」


「檜佐木、お前は私には勝てないよ。今のお前の言葉からは、一欠片の恐怖も伝わって来はしない」


檜佐木の目に動揺が走った。

そのまま剣撃が始まる。

その応酬に、檜佐木と狛村の霊圧が上がってゆく。


「解せないな。君達がそれ程の霊圧を持っているはずがないのだが」


呟く東仙に、狛村が答える。


「魂魄の補強。それだけで、ほとんどの死神が力を増すということを知っていたか」


「魂魄の補強だと?」


「全ての魂魄は、自身に不要な影響を与えないよう、霊圧を極端に制限している。それに耐えうる魂魄になれば、制限下にあった力も使えるということだ」


「…そうか。誰がやったのか、などと無駄な問いはしない。それなら、私も」


東仙は静かに、顔に手を翳した。

それをみた狛村と檜佐木が目を見開く。


「止めろ!東仙!」


「藍染様は私に、強力な力を与えて下さった」


霊圧が渦を巻き、東仙の姿を隠す。

変容していく霊圧に、狛村が吠えた。


「そこまで堕ちたか、東仙!!」


霊圧の姿を渦が弾け飛ぶと、白い無機質な仮面を付けた東仙が現れた。


「虚化…それは虚化ですか、隊長!」


「そうだ」


呟き、東仙が檜佐木を斬り付ける。

その速力と力は桁違いに跳ね上がっていて、檜佐木は吹き飛ばされた。

次いで斬り掛かってきた狛村をもあしらい、地面に叩きつける。

その先にあったビルが両断されるように倒壊した。


「おかしな物だな。お前達が仲間とする、あの半死神の少年も同じ虚化の力を持っているはずだ。私がその力を手にする事がそれ程蔑まされねばならない事か?」


すとんと狛村のそばに降り立った東仙が不思議そうな声音で問うた。


「彼は…黒崎一護は望んで虚化した訳ではない。だが貴公は違う!貴公は死神として十分な実力を持ちながら、自らその道を踏み外したのだ!貴公のそれは、堕落だ東仙!」


「堕落だと?死神から虚に近づく事が、なぜ堕落だ。それは死神と虚を正邪で分ける矮小な人間論から出る言葉だ」


「違う!仲間を裏切り、友を裏切り、部下を裏切ってまでも過ぎた力を手にする事が堕落だと言っているのだ!」


「狛村…」


その時、風死の鎖が、東仙の首に絡みつき、引き倒した。


「踏み込みが浅かったか。私も甘いな」


倒れた東仙の首を抑え、風死を構える檜佐木に、東仙が呟く。


「いえ、俺が反射的に半歩躱したんです。剣を抜いて立つ時は、常に半歩躱せるように構える。東仙隊長、貴方の教えです。東仙隊長、貴方が居てくれたから…」


今すぐにでも殺せる体勢で俯く檜佐木に、遠くで見ていた玲はすっと目を閉じた。


―戦いを恐れるからこそ、同じ戦いを恐れるものの為に剣を抜ける。

恐れを持たぬ者に剣を握る資格はない。


過去の、東仙の言葉だ。


「俺は…俺には分かりません東仙隊長。あの言葉を言った貴方が、何故力のために全てを捨てたんですか!今のあなたは!一体何を恐れているというんですか!」


叫ぶ檜佐木の腹に、東仙の刀が突き刺さる。


「東仙、隊長…」


絶望に満ちた顔の檜佐木を、東仙はビルの屋上から蹴り落とす。


「恐れているさ。私の恐怖は百年前から、お前達死神と同化して死ぬことだ」


「卍解、黒縄天譴明王!」


檜佐木の扱いに激昂した狛村が卍解する。

巨大な、総甲冑が、同じく巨大な刀を構える。

玲から見ても、彼等のすれ違いは、余りに大きなものだった。

檜佐木の腹の傷を遠目に回復させながら、玲は一つ溜息を零したのだった。



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