Chapter17 〜決戦〜

虚化が解け、目を開いた東仙に、狛村が静かに口にした。
「狛村、檜佐木…」
「喋るな。虚の力のおかげで、呼吸は出来ているが、喉が裂けているんだ。今は喋らなくていい」
呆然と、喉に手をやる東仙に、優しい表情で狛村が続ける。
「東仙、貴公は言ったな。我々は元々刃を交える定めにあったのだと。儂も戦いの中でそれを感じていた。恐らく檜佐木も同じ筈だ。今までの我々の関係は仮染だった。我々はいずれ刃を交え、こうして、心から分かり合う運命だったのだ」
僅かに、東仙の目が開く。
「東仙。憎むなとも言わん、恨むなとも言わん。ただ、己を捨てた復讐などするな。貴公が失った友に対してそうだったように、貴公を失えば、儂の心には穴が開くのだ」
「…ありがとう、狛村。」
そう言って、東仙が狛村の言葉に涙を流す。
もう終わりを悟って、東仙が檜佐木に手を伸ばす。
「檜佐木、顔をよく見せてくれ…まだ、虚化の影響で目が見えるんだ…今のうちに、お前の顔を見ておきたい」
「隊長…」
「はい、その前に治そうね」
すとんと降りてきた玲が、空気をぶち壊さん声音で言った。
「…良いのか、瑞稀」
「何のために貴方達二人を戦わせたと思ってるの。大丈夫、お爺様も文句は言わないよ」
虹色の光で東仙を包みながら、玲はふわりと優しく笑う。
その手には、小さな十字架。
そこから発される僅かな霊圧を感じて、あれが藍染の成れの果てだと、狛村にも檜佐木にも理解出来た。
「東仙要。今なら目、見えるようにしてあげられるよ。どうする?」
その問いに、東仙は首を降る。
「いや、良いんだ。私は…目が見えると、心が見えない。それにやっと気づけたのだ」
「わかった。虚化は、彼等みたいに仮面が出るだけにしておくよ。でも暫くは安静にね」
笑顔でそう言った玲は、あっという間に東仙の傷を治すと、その場から消えた。
「礼を…言わねばならんな」
「そう、だな」
「ですね」
その場に取り残された三人は、そう言って笑いあった。
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