Chapter4 〜華奢〜





琥珀色の潤んだ目。

朱く染まった頬。

乱れた吐息。


俺は今、玲を素直に乱菊の元に行かせた事を本気で悔いていた。

普段から直視するのを躊躇う様な此奴が、酔って理性を無くしたら、最早危険物だ。

男の理性なんて風前の灯火。

現に最初に絡まれた浮竹は顔を朱くして今も咽せ続けているし、朽木までもが逃げる様に帰った。

京楽は真顔になって押し倒そうとした瞬間に気絶させている。


「と…しろ…?」


目を合わせない様に顔を背けているのが不満なのか、伸ばされる手を掴んで止めさせて。

俺は違う席で飲んでいた副官達に視線を向けた。

檜佐木は玲にあてられて突っ伏し、雛森は寝ていて、松本は狂った様に笑っている。

阿散井はまだ目が覚めていない。

まともなのは此方に哀れみの様な、謝罪の様な、よく分からない視線を向ける吉良と、未だ気管に入ったらしい酒に咽せている浮竹だけ。

ぎゅうと腰を締め付けられて、思わず視線を戻すと、涙目で見上げる琥珀の瞳と目があって。

どくりと動悸が跳ね上がった。

絶対朱いだろう顔を手で覆う様に隠すと、


「…とーしろ、きらい?」


泣きそうな目で此奴が訴えるのは不安で。


「…んな訳ねぇだろ」


嫌いになれれば、どれだけ楽か。

そんな風に思う自分がいる。

慣れない感情に振り回されて、自分が嫌になったのも一度や二度じゃない。

たった数日しか一緒に過ごしていないお前に、心の大半を占拠されていて。

それでも壊したくなるような衝動は、どうにか抑えていたつもりだったのに。


「…眠いよぅ…」


擦り寄ってくる此奴が無意識に発する色香に、あてられそうになって、目を閉じて深く呼吸した。


「…浮竹。後頼んでいいか?」


漸く落ち着いてきた浮竹に問うと、こくこくと頷きが帰ってきた。

鮮烈なまでに男を狂わせる隣の此奴を視界に入れない様にしているのが、すぐに分かった。


「…なら頼む。此奴送って俺も帰る」


机に金子を幾らか置いて、しがみつく玲をひょいと抱き上げる。


「…歩ける、よ?」


腕の中で扇情的に首を傾げる玲から無理矢理視線を外して。


「吉良。変な噂流すなよ?」


一応口止めはしてから店を出た。


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