Chapter1 〜欠片〜

「…悪いな。客に茶まで淹れさせて」
「いいよ。全部分かるから、困らないしね」
今更のように気を遣う冬獅郎に苦笑して、お茶を飲む。
温度も完璧。
うん、情報源がフルオートなのはやっぱり便利だね。
ちょっと普通じゃないって自覚させられて好きじゃないけど。
「しかし、その情報源は誤魔化せよ。執務も俺が教えたって事にしとけ」
「…やっぱり?」
三色団子を齧りながら冬獅郎に視線を向ける。
「隊長格は兎も角、他の奴らには知られねぇ方が良いだろうな」
同じ様に団子を手に取りながら、複雑な表情を見せる彼。
心配してくれているのだろう。
なんだか、心が暖かくなる。
「調停者とかって言うのも隠すなら、斬魄刀…どうしようかな。私の刀、どう頑張っても普通に見えないから」
初めて口にする食べ物に心の中で感動しながら、首を捻る。
すると、翡翠色の瞳が真っ直ぐ此方を向く。
「お前の斬魄刀の能力ってなんなんだ?」
そういえば、後でって言ったっけなんて思い出す。
さり気無く防音効果のある結界を張って。
「…創造と破壊かな」
しれっと答えると、冬獅郎はぴしりと固まった。
「つまり?」
言葉だけで途方も無い能力だと言うことは分かったらしい。
けれど、どの程度の能力なのかなんて想像もつかないのかもしれない。
「端的に言えば、出来ないこと数えたほうが早いって事」
さらりと答えると、冬獅郎は難しい顔をした。
「…因みに出来ねぇ事ってなんだ?」
「失った魂魄を元の身体に戻す事は出来ない…かな」
「他は殆ど出来ちまうのか」
「…ん〜…輪廻転生に干渉しない事なら大抵出来るかも」
「…そうか…誰にも言わねぇ方がいいな」
「だよね」
もっと取り乱すのかと思ったけれど、彼は思ったよりずっと冷静な人だったみたいだ。
大体性格を知ってるって言っても、言葉に対する反応までは予測仕切れないから、ちょっと意外。
それよりも、態度が変わらない事が凄く嬉しかったりする。
自分が異質過ぎるのは理解していたから。
「氷雪系だと氷輪丸と被っちゃうし、炎熱系は総隊長だし…どうせなら風雷とかにしちゃおうかな。風と雷操れれば戦闘も不便なさそう」
どんな能力がいいかと悩んでいると、お茶を一口飲んだ冬獅郎が口を挟んだ。
「…創造って言ったな。それは斬魄刀自体も創造出来るのか」
「出来るよ?天照が嫉妬しそうだけど」
うん、それはちょっと怖い。
会ったことないけど、自分の中に居るんだから性格ははっきりわかる。
それなら、彼女の能力制限して、風雷系の斬魄刀になりきってもらうしかないんだけど。
「天照ってのがお前の斬魄刀の名前か?」
「そう。天照が創造。月読が破壊の斬魄刀だよ」
最早なんの警戒心も無くなった私は、冬獅郎に簡単に情報を与える。
此処まで話せば、この先は知ってようがいまいが同じだろうから。
「は?二本…?」
「…破壊と創造なんて、対極の力、一本の斬魄刀が有してるわけないじゃない」
「…いや、まぁそうかもしれねぇが」
「因みに月読はちゃんと眠ってるから大丈夫だよ」
「…はぁ…そうか」
最早驚きを通り越して呆れている冬獅郎は、もう何も言うまいと口を閉じた。
少し冷めたお茶を飲んだ私は、今後の方針を決める。
単純に、極力戦闘は避けて、無理なら鬼道と白打で乗り切る。
それで倒せないような強敵が出てきたら、斬魄刀はその時考えよう。
取り敢えず聞かれたら、風と雷って言っておけば良いかな。
「よし」
一人頷いた私に、冬獅郎が視線をあげる。
「決めたのか?」
「うん」
取り敢えずの方針を伝えると、彼は分かったと頷いてくれた。
それから少し雑談をして、日が傾いてきたぐらいで冬獅郎が立ち上がる。
同時に誰かが執務室の扉を叩いた。
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