Chapter1 〜淫呪



あっという間に姿を見せたのは男の人が二人。

一瞬遅れて、さらに四人。

そこからさらにどんどんと人が集まってきて、私は戸惑った。


「玲!」


今にも抱きつかんばかりの銀髪の青年の声が、僅かに震えていて。

待っていてくれたのだと、そう感じた。

けれど、今こんな人の多い場所で接触するわけにはいかなかった。

何しろ私の今の体は、淫紋の呪いがかかっている。

少しでも意識した男性相手にあられもなく発情してしまう魔の呪いが。

それは神界に住まう神々の最後の抵抗だった。

どうしても行くというのなら。

この呪いを受けてもそこに留まるというのなら、最早何もいうまい。

だが心しろ。その呪いは一度発動すれば達するまで解けぬ。

精々お前の色香に当てられた忌まわしき者共にその体を蹂躙され、幻滅して戻ってくるが良い。

確かそんなことを言っていた気がする。

そんなわけで、抱きしめられそうになったのをギリギリで避けて名前を問う。

私には、以前の記憶が一切残されていなかったから。

抱擁を避けられたのがショックだったのか、記憶が無いことにショックを受けたのか。

暫し集まってきた黒装束の人たちは困惑していた。

そこへ、人波をかき分けて髭の長いお爺さんが前へ出てくる。


「…その霊圧…間違いなく瑞稀玲じゃな。じゃが、記憶をなくしてまでどうして戻ってきた」


「…なんでかな。ずっと呼ばれてる気がしてたの。私も心残りがあった。それが何だったかまでは思い出せないんだけれど」


「…そうか。ようわかった。兎に角一度精霊邸に戻るとするかの。皆、それで良いな」


集まった人達に一喝して、その声で半数の人たちがその場から姿を消した。


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