Chapter1 〜淫呪




「なぁ、いつまでもその子独り占めするんずるいわ、ボクにも自己紹介さしてーな」


そんなことをぼやきつつ、近寄ってきたのは、銀灰色の髪と狐目の男の人。

一見して警戒心を抱きそうな張り付けたような笑みは、もう癖のものなのだろう。

それを心が知って居た。

だから警戒せずに済んだのだ。


「ボクは市丸ギン。ギンって呼んでな、玲ちゃん」


「うん、それにしてもまだそんな顔してるんだ?」


「へ?」


「……あれ、今私何か言った?」


沈黙が降りる。

その沈黙が痛くて、居た堪れなくて、まだ名を聞いていない、残っている人の方へ視線を向ける。


「ウルキオラ・シファーだ。それにしても女、死神にまでなってやったと言うのに記憶をなくして戻ってくるとはな」


「…えっと…ごめんなさい」


死神になってやったと言うことは元は違ったのだろう。

それを私がこちら側に引き込んだことになる。

罪悪感でいっぱいになった。


「んなことどうでも良いじゃねぇか。戻ってきたことに変わりはねぇんだからよ。おい、俺はグリムジョー・ジャガージャック。グリムジョー以外の名で呼んだら殺すぞ」


「うわぁ…」


なんとなく、こちらは変わって居ないなと心が感じてしまう。

いちいち人に突っかかるような物言いも、軽々しく使われる強気の言葉も。


「おい、引いてんじゃねぇよ。なんとか言いやがれ」


グイッと顔を近づけてくるグリムジョーから逃げながら、首を縦に振る。


「わかった、わかったからそんなに近付かないで…」


「あん?近付いたらまずいことでもあんのかよ」


「あるの!て言うか捕まえようとしないでってば!」


「何がまずいのか行ってみろ。教えたらやめてやるよ」


獣の加虐心を煽ってしまったのか、覚えたての瞬歩で追いかけっこに発展する。

何度目かの瞬歩でグリムジョーの手を躱した瞬間、桜色の刃が浅黄色の獣を飲み込む。


「…グリムジョー、大人しくしろ」


「っち、イッテェな、わーったよ」


白哉の放った攻撃で多少のダメージを受けて頭の冷えたグリムジョーが、私から視線を外す。


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