Chapter1 〜淫呪

「そんなに怒らなくても良いのに」
「お前な…自分がどういう状況かわかってんのか」
「んーあんまり。実感はないからねぇ」
そう言いつつも、松本の執務机へと戻っていく玲に、ほっとすると同時に喪失感を覚える。
俺も人のことをとやかく言っていられる精神ではないらしい。
松本に執務の回し方を教わっている玲を見遣って俺はまたため息を吐いた。
そこへ扉がノックされ、ひょいっと浦原が現れる。
「お、居た居た。玲さん、ちょっと技術開発局に顔を出してもらえませんかぁ?」
「ん、誰?」
「おや、本当に記憶がないんスね。私十二番隊隊長兼技術開発局局長の浦原喜助と申します」
「うん、喜助が十二番隊ね。うん、何か用事?」
「はい、以前玲さんが作ってくださった潜在霊圧制御装置なんスけど、私達隊長格しか持って無いじゃないっすか。それが欲しいって死神の皆さんから予約注文殺到してまして。簡易版なら作れるかと研究していたんですが、どうにも魂魄強化の段階で玲さんしか持っていない特殊な力が必要なようなんすよ」
「えっと…潜在霊圧制御装置…乱菊、持ってる?」
記憶の無い玲は、以前に創った物と言われてもピンとこなかったらしく、松本の腕についている華奢なブレスレットに触れる。
そうして一瞬目を閉じて、頷いた。
「あーうん。天照の力が無いと絶対出来ないね」
「あぁ、創造の斬魄刀の方でしたか。兎に角一旦試験段階のものをお見せしたいんですが…」
「うん、わかった。じゃあ乱菊、冬獅郎ちょっと行ってくるね」
そう言って浦原と二人部屋を出て行った。
ふっと緊張感が解けると同時、どうしようもなく寂しいと感じてしまう自分がいて、俺は陰鬱な気分でため息を吐いたのだった。
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