Chapter1 〜淫呪






俺は寝息を立て始めた玲の寝顔を見ながら、溜息をついた。

あれは危ねぇ。

つーか爆弾だ。

此奴がギリギリのところで理性を手放してなかったから、なんとかこっちも抑え込めた。

が、静止の声がなかったら。

絶対欲に飲まれて滅茶苦茶に犯し尽くしていたに違いねぇ。

まだ主張している欲を取り敢えず適当に抜いてから、眠っている玲の隣に横になる。

神で無くなって、記憶をなくして戻ってきた。

それでも、やっぱり此奴は強い。

最初はその強さに惹かれた。

だが、いつの間にか此奴の目に自分が映るのが心地よくなった。

顔が見たいと危険を犯してまで此奴に会いに現世にまで行ったこともまだそう昔の話じゃねぇ。

死神になって、此奴がいなくなって。

なんで自分がこの世界で生きてんのか、そんな理由すら見つけられずに。

ただただ、光のように眩しい此奴の幻が、現実になるのをずっと待っていた。

傷つけたくなんざねぇ。

守ってやりたいと思って、死神の術まで覚えて修行して。

卍解に至って、隊長付になってからは、ただひたすら、自分より弱い虚を狩る日々。

退屈だった。

だがそれを此奴は一瞬で変えちまった。

濡羽色の髪を撫でると、さらさらと手から零れ落ちる。

そっと抱きしめると、自分の鼓動が早鐘のように脈打つのを感じて、実感する。

俺は元は虚だ。

それが自我を持ち、運良く進化し、愛染に出会って破面となり。

此奴の強さに魅入られ、此奴の優しさに取り込まれた。

ただそれだけの理由で此処にいる。

正直言っちまえば死神も、尸魂界もどうだって良い。

此奴に魅入られた時点で、俺は地位も名誉も、その他の何にも興味を示せなくなった。

唯一の楽しみは戦闘だが、それも全力を出せる相手なんざいねぇ。

此処で戦う分には怪我しねぇ模擬戦程度なら許されているが、傷を負うような、今日みたいな全力の戦いはできねぇ。

そんなもんは戦いじゃねぇ。

結果、興味の対象が此奴だけになっても仕方ねぇことだ。

居てくれれば良いなんて小さい考え方ができねぇ。

此奴の全てを俺のものにしてしまいたい。

そう、全て。

心も、体も、全て。

だから身体だけの関係は望まねぇ。

恐らくそれは此奴にとって嫌悪の対象にしかならねぇから。

そのためなら、いくらでも我慢してやる。

だが、他の男の元に行くのなら。

応援してやれる自信はなかった。

独占欲が強すぎて御しきれねぇ。

好きな奴が幸せであればそれで良いなんて御託を並べられる程、大人でもねぇ。

結局俺は、自分のことしか考えてないのか。

こっちの世界に俺を呼び寄せた此奴が俺をどうしたいのか、今更わかるはずもねぇが。

殺したくない程度には気があったと、そう受け止めて良いものなのかどうかさえ。

わからねぇ。

まぁ、なるようになるだろ。

俺は思考を放棄して。

相変わらず甘い香りを漂わせる玲を抱きしめたまま眠りに落ちた。

一先ず今だけは俺のもんだ。

それで満足しといてやるよ。

そう心の中で付け足して。


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