Chapter1 〜淫呪

「…破壊の斬魄刀ねぇ。あんまり相手にしたないけど…玲ちゃんの頼みならしゃあないわ」
「そういう相手なら、俺の刀の方が向いてるだろうしな」
スタークもそう言いつつ立ち上がる。
「さっさと済ませてくれよ。こっちは隊長さん連れ戻しに来てんだ」
「うん、わかった。じゃ、場所移動しよっか」
そう言って、瞬歩で修練場の奥の方へ移動する。
先ほどよりも多重に結界を張って、更には一人一人に魂魄保護結界まで掛ける。
「なんなん?この膜みたいなん」
ギンが自分を覆う薄い膜を指して問うてくる。
「一撃必殺じゃなかったら取り敢えず死なないように、ね」
「…冗談いう顔とちゃうよ、それ」
つと彼の顔に冷や汗が浮かんだ。
スタークも面倒ごとに首を突っ込んでしまったと思ったのか、大仰にため息を吐く。
「まぁ、あんまり加減しちゃ試運転にならないからって理由で張っただけだから。最初から全力出してくれれば、それに合わせて調節する」
「そうかい」
「わぁったよ」
「そんなら、ほんまに本気で行くよ?」
「うん。そうして」
そう言ってブレスレットの抑制率をゼロに下げる。
月詠を抜くと、彼が破壊対象に狂喜しているのが伝わってきた。
ギンは最初から卍解、グリムジョーとスタークは卍解と虚化して、霊圧を上げている。
「醒めろ‘月詠‘」
普通の斬魄刀にしか見えなかった刀は、その解号を聞いて漆黒の刀身を顕にする。
シャラリと鍔から落ちる鎖が、音を立てる。
発する霊圧はただただ膨大で。
グリムジョーもスタークもギンも、その霊圧に目を見張る。
「行くよ」
月詠の能力は刀に触れたものを破壊する生粋の一点特化。
それに加え、私の身体能力の底上げまでしてくれる。
一太刀振るえば周囲は灰となり瓦礫となり、刃の形のクレーターができる。
ギリギリでそれを交わした3人は、戦慄しているのだろう、顔つきがだいぶ変わった。
この刀を握っていると、私もあまり優しくなくなる。
それは月詠の破壊の力に僅かながらも魂を共鳴させられているからで。
スッと目を伏せて刀を薙ぐと、破壊の一閃が彼らを襲った。
そのスピードは瞬歩よりも早く。
避けきれなかったグリムジョーがお腹から血を吹き出させて落ちていく。
それを追撃せんとする月詠を手で止めて、スタークとギンを見る。
ギンの神殺鎗を鋒がこちらを向いてから避けられる反応速度と瞬歩速度。
ただ刃を振るうだけでそこにあるものを皆破壊する一閃を前に、スタークが炎の狼と化した自身の斬魄刀を向けさせるも、瞬殺。
やはり月詠はちょっと理不尽すぎたかなと思い、鞘に納める。
「ごめん、やっぱりこの子は加減できないね」
そう言って謝ると、ギンとスタークはあからさまに肩の力を抜いて息を吐き出した。
私は魂魄保護結界がグリムジョーの血を止めていることを確認して、時間回帰させる。
傷は塞がり、汚れも何もかも消えた。
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