互イノ共通点

「ようこそ首領」

太宰は、座っていた台の上から降りるとそう言った。鳴野っちもいる。首領は、笑顔を浮かべ四年ぶりだと二人に向けて言った。やはり、二人共あの時の外套は焼いたらしい。

「ポートマフィア首領森鴎外殿」

福沢さんが出てきた。生で見るのは初めてだ。感激に近いものを感じつつ抑える。抑えろ私。

「武装探偵社社長福澤諭吉殿」

二人は、一歩前に出る。全員が緊張感を感じている。私は、やべえ鴎福だとか考えている馬鹿である。無論、顔には出していない。

「結論を云う。同盟はならずとも"一時的な停戦"を申し入れたい」

首領は、驚いた顔をしていたが直ぐに眼を細めた。

「興味深い提案だ」

福澤さんが云う言葉をさえぎり、T・シェリングやJ・ナッシュ、H・キッシンジャーを読んだことはあるかと訪ねてきた。その答えに、私と太宰、鳴野っちは同時に応えた。

「孰も戦争戦略論の研究家ですね」

太宰と鳴野っちが教えこまされたと呟いていたが、私は森さんに視線を移した。

「国家戦争と我々(マフィア)のような非合法組織の戦争には共通点があります。協定違反しても罰するものが居ない。停戦の約束を突然マフィアが破ったら?探偵社が裏切ったら?損するのは停戦協定を信じた方のみ。先に裏切ったほうが利益を得る状況下では限定的停戦は成立しない。あるとすれば完全な強調だが――」

まず無いな。それは、太宰も同じらしく有り得ないと云う。隣、驚いてるけど。

「その通りマフィアは面子と恩讐の組織。部下には探偵社に面目を潰されたものも多いからねぇ」

それ、黒蜥蜴かな?芥川かな?あ、中也?違うね、知ってる知ってる。

「私の部下も何度も殺されかけているが?」

敦くん?それとも、谷崎さん?ナオミちゃん?春野さん?Qの一件はごめんね。こっちも被害食らってるから。 

「だが死んでいない。マフィアとして恥ずべき限りだ」

福澤さんは刀を抜いたらしい。走ってきた銀と立原は銃と小太刀が折られた。あら、可哀想に。だが、森さんは手術刀(メス)を取り出し向けた。

「…刀は棄てた筈では?孤剣士『銀狼』__福沢殿」

「手術刀で人を殺す不敬は相変わらずだな__森医師(せんせい)」

この二人、なにか接点でもあるの?知りたいなあ。腐的要素があるんですが。

「相変わらずの幼女趣味か?」

「相変わらず猫と喋っているので?」

お前ら趣味変わんねえよ。福沢さんが薄れていき森さんは後ろへと立っていた。谷崎さんの『細雪』か。

「……立体映像の異能か」

あれ、なんで……悲しそうな顔を―。え、もしかして本当に?ふいっと踵を返すと歩き出す。

「今夜探偵社は呪いの異能者"Q"の奪還に動く」

振り返り、言葉を紡ぐ。今夜だけは邪魔するなと福沢さんは紡いでいく。


「それが我々唯一の共通点だからだ――『この街を愛している』」
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