ほしくず


掃討作戦:二期:ヴィダール[20161222]

オセアニア連邦産業コロニー群の宙域にて、MS戦が繰り広げられていた。

イオクは長距離仕様のレールガンを敵にワイヤーで絡め取られるも、ジュリエッタが補佐に入り、事なきを得る。

「俺の邪魔をするなジュリエッタ!」
「邪魔なのはイオク様です。下がっていてください」

あちらは大丈夫だろう。シエルは別の敵機へと狙いを定めた。

ミサイルの爆発。次いで青い閃光が一筋。シエルの乗るMSのモニターに『ヴィダール』と表示される機体が、ものすごいスピードで敵機へと突っ込む。
左手で構えた剣にて敵をまるで槍で貫くように刺す。あっという間に3機以上のMSが戦闘不能になる。接近戦も得意なようで、相手の攻撃をひらりとかわし、足先の格闘用ブレードで一閃する。業を煮やした敵から放たれるミサイルを両手に持ったハンドガンで見事に打ち落とす。
オレンジ色の光に照らされるMSを、シエルは美しいと思った。その、強さを。まるで***のような―――

「ぁぐっ…!」

突然の痛みがシエルの頭を襲う。割れるように痛い。こんな痛みは初めてだ。シエルの記憶にある―――そう、あの薄暗い路地裏で、ラスタルに手を差し伸べられた時から初めての。それより前の記憶は―――ない。
たまらずコントロールレバーから両手を離し、頭を抱え込む。痛い痛い痛い―――!
玉のような汗が全身から吹き出るも、それを気持ち悪いと思う間もなくシエルは意識を失った。





深い闇の底より意識が覚醒する。ゆっくりと指を動かし、問題なく動くことを確かめる。次いで目を閉じたまま、頭の先から足先までの状態を確認する。少し頭がぼんやりしているだろうか。
己の身体に異常がないことを確認したのち、今度は現在地を確認するため、ゆっくりと目を開ければ天井が見えた。
まだあまりよく回らない頭で視線を周囲へとやれば、白いカーテンと簡単な治療ができる医療器具を見つけた。ここは医務室だろうか。

「目が覚めたようだな」

自分だけしかいないと思っていた空間に響く声にシエルは一気に覚醒する。これは染み付いたものだ。己の身体に。いつ、どうやって、かは知らないが。しかし、気付けなかったとは失態だ。シエルは内心で舌打ちした。

「あなたが私をここに?」
「ああ。適任が俺しかいなかったのでな」

入り口付近の壁に背を預け、腕を組んで立つヴィダールは至極当然のことのように言った。

彼の言うことに、そうだろうなとシエルは思った。得体の知れない自分のことを、どのように見られているのかぐらい知っている。ましてやあの気位ばかりが高いイオクが自分を医務室まで運ぶとは到底思えないし、良好どころか最悪といってもいいほどの関係であるジュリエッタのはずもない。
もっとも、シエルにとっては誰にどう思われようが関係なかった。自分はただラスタルより与えられる任務をこなすのみ。それ以上でもそれ以下でもない。こんなところも、きっとジュリエッタが彼女のことを気に食わない要因だろう。

「コックピットから引きずり出した時は随分と顔色が悪いようだったが、今は問題ないようだな」
「手を煩わせた。すまない」

シエルの口から零れた謝罪に、ヴィダールの胸の前で組んだ腕がピクリと動く。仮面で顔が隠れていてもわかる。どうやら驚いているようだ。

「どうして驚く?」
「…いや、まさかキミの口から謝罪の言葉を聞くことになるとは思いもしなかったのでな」
「私とて、自分に非があると思えば謝罪くらいする」
「そうか」

いつものように答えただけなのに、なぜかヴィダールからは優しい空気を感じた。


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