::ヴィクトルの一回り歳が離れた妹
::お兄ちゃん大好きっ子(兄も同様)
「ここが日本ね」
一人の少女が腰まである艶かな銀色の髪を風になびかせ、今、日本に降り立った。
「お兄ちゃん!」
「サラ!どうしてここに!?」
「もう!そんなのお兄ちゃんがロシアに帰ってこないからじゃない!」
心配で私も来ちゃった、と少女は可愛く舌をぺろりと出して言った。
ここはアイスキャッスルはせつ。勇利とヴィクトルはいつものように練習に励んでいた。そこに、ヴィクトルのことを兄と呼ぶ一人の少女が現れた。
確かに、似ている。と、勇利は思った。血の繋がりをたっぷりと感じる。まるでヴィクトルを小さくし、且つより女顔にした感じだ。
勇利はスケートリンク上で抱き合い、くるくると楽しそうに回る二人を見ていた。
やがて二人は久しぶりの兄妹水入らずの時を堪能した後、ヴィクトルは少女をそっとリンクサイドに降ろす。最後に頬へのキスを忘れずに。
花がほころぶような幸せな笑みを浮かべた少女は、やがて勇利へと身体の向きを変えた。
動きに沿ってふわりと動く銀糸はまるでジュニア時代のヴィクトルのようだ。勇利はどきりと視線を奪われた。
ロシアの海を溶かしたような瞳が己をじっと見つめる。その双眸が釣りあがっていなければもっと見とれていたことだろう。
ジュニア時代のヴィクトルにそっくりな、当時の彼をもっと女性的にした美少女の柳眉が、段々と釣り上げられなければ。
「あなたが勇利・勝生ね」
「は、はいっ!」
腰に両手を当て、小さな女王様然とするサラに、勇利は彼女より十歳近く年齢が上にもかかわらず、びしっと直立不動となった。まるで教師に叱られた時のような気をつけの姿勢だ。
「お兄ちゃんがロシアに帰るまで、私も長谷津にいるわ。つまり、これからは私も貴方の家に住むわ」
よろしくね、と可愛くウインクする少女に、勇利はスケート場の外まで響くような大声で叫んだ。
「えええええーーー!!!」
「お兄ちゃん、一緒にお風呂入ろうね」
「まったく、俺のお姫様はいくつになっても甘えん坊だなぁ。いいよ、入ろうか」
「入るんかいっ!!ってそもそもうちには混浴はありません!!」
後には細かいことは気にするなといった風の兄妹と、酷く疲れた勇利がいた。
ああ、常識人がほしい!