ほしくず


ピアニスト女主2:×piano:安室[20190120]

どうしようどうしようどうしよう――!!

沙羅は非常に緊張していた。予選、1次、2次審査と、緊張したけれど、それでも伸び伸びと彼女は自分のピアノを弾くことができた。
けれどショパン・コンクールのファイナル。そう、ファイナルなのだ。沙羅は2次審査を通過し、最後の審査を受ける資格を得た。この最終審査で、本大会の優勝者が決まる。
誰が優勝するのか分からない。ポーランドの新星レフ・シマノフスキ。優勝候補のアルゼンチンのアレグラ・グラナドス、中国のパン・ウェイ。ドイツのオーブリー・タイスに、個性的な演奏のダニエル。他にも他にも、皆、権威あるコンクールのファイナリストに選ばれるほどの、素晴らしい実力の持ち主だ。
そして、沙羅と同郷の日本人、一ノ瀬 海。
海、海、彼の演奏は素晴らしい。彼のようなピアニストと同じ時代を生きられることを心の底から嬉しく思う。森の中のピアノ。そして彼の音は森を抜けて、どこまでも続く平地を駆け、大空のど真ん中、そして海へと!
ああ、彼のピアノは自由だ。そして私のピアノも。私達はどこまでも自由に行ける。私達のピアノは自由だ!自由なのだ!

もうすぐ自分の順番が来てしまう。舞台に上がることを怖いと思ったのは初めてだ。初めてコンクールに参加した時でさえ、そんなことは思わなかった。

手の平をじっとりとした汗が流れる。指が震える。だめだ、暖めないといけないのに。指先がどんどん冷えていく。

ああ、前の演奏者が終わってしまう。時間だ。私を呼びに来るマエストロのノックが―――!

「〜〜〜♪」
「…っあ、」

沙羅のスマートフォンが鳴った。メールの着信音だ。
震える指で画面をタップする。


自分の演奏を信じて頑張れ。


降谷からのメッセージだ。彼も、組織の殲滅作戦の佳境で、こんなメールを送る余裕などないというのに。

もう、沙羅の指は震えていなかった。
愛しい恋人からのメッセージを胸に、沙羅は舞台に出た。
私は、私のピアノを弾く。彼に届くように。どうか、無事でいてと。


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