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「最近お前パンダとよくいるな」

真希ちゃんはするどい。

「真希ちゃんも最近憂太と仲良いね?」

うふふ、と口に手を当てて笑うとカンに触ったのか「そんなんじゃねえ!」と怒られてしまった。
じゃあどんなんだろうねえ〜とパンダの膝の上に座りながら二人でニヤニヤした。
今は立ち合いの時間で、真希ちゃんが憂太をしごきにしごいているのを私とパンダと棘と悟は暖かく見守っている。

「憂太が高専に来て3ヶ月か。かなり動けるようになったな」
「しゃけ」
「性格も前向きになったよねえ」

憂太は里香を解呪するべく、強くなろうとしている。立派なものだと、ばばむさく頷いた。
確かに呪力ないくせにとんでもない身体能力を持ってる真希ちゃんの攻撃を流したりもしてるし、本当に目まぐるしい成長だ。

「すじこ」
「真希ちゃんもすごく楽しそうだよねえ」
「確かにな。今まで武具同士の立合いってあんまなかっ…。…憂太ぁ!!ちょっと来い!!カマン!!」

いきなり耳元で吠えられて思わず耳を塞ぐ。突然どうしたのかと思ったら私を膝に乗せているのもお構い無しに立ち上がり、私はそのまま前に倒れ込んでしまう。

「パンダいきなり立つな!」
「超大事な話なんだ!!憂太、心して聞け!」

駆け寄ってきた憂太にパンダは耳打ちをする。

「お前巨乳派?微乳派?」

それ今聞く?と思ったがなにやら憂太も真面目に答えている様子。
パンダに転ばされ四つん這い状態でそのままその光景を見ていると「ツナツナ!」とケツに暖かいなにかを感じた。

「高菜!!」

棘の顔が赤くなってる。なんだと思って悟を見やると「パンツ見えてたよ」と言われた。それをタオルで隠してくれたらしい。
そういえばジャージのズボンのゴムが伸びてて最近紐で縛っても落ちてくる。ゴムが伸びたのか?あ、もしかして痩せたのか?どちらにせよ買い替えないと行けないな、と思いながら、「粗末なものを…」と謝った。
あれ、今日もわりかしえっちなパンツを穿いていた気がする。まあ汚ねえ綿パンよりは粗末じゃなかったか、とズボンをぐい、と引き上げた。
パンダと真希ちゃんが取っ組み合いをしてる中、パンパンと悟が手を叩き「集合」と呼びかける。呼びかけなくてもほぼみんな集合してる。

「そこの二人は引き続き鍛錬してもらって、棘。ご指名。君に適任の呪いだ。ちゃちゃっと祓っておいで」
「しゃけ」

これから棘は任務か。どうか私のパンツのことは忘れて集中してくれたまえ。杞憂だろうけど。
それには憂太もサポートもとい見学で行くことになって、私とパンダと真希ちゃんは3人で取っ組み合いという名の鍛錬をすることになった。

「んで最近なんで寧々子はパンダにずっとひっついてんだ?」
「え、またその話に戻る?」
「親離れしてセンチメンタルなんじゃねえの?」

親離れ?と真希ちゃんが首を傾げる。
真希ちゃんは私の事情を詳しくは知らないから、なんの話か分からないと思っていたが、「ああ、悟か」とすぐに納得された。

「なに、悟にフラれたか?」
「違いますー。溢れる性欲を抑制するためにパンダに引っ付いて性欲を流し込んでるんですー」
「きめえ」

それはさすがにきめえな。と自分でも思った。

「棘とかはどうなんだ?」
「もろタイプ。どストライクですわ」
「え、そうだったのか?」

避けてるからよっぽど嫌いなんだと思ってたわ、と真希ちゃんは心底意外そうに言う。うん、苦手だよ。だってまた明太子とか言われた日には自分がどうなるかわからん。
でも顔も声も整っている。普通にいやらしい目で見れます彼のこと。

「あ、大丈夫。憂太は興味ないから」
「だからちげーよ!!」

ボコ、と拳で殴られた。すごく痛い。
日も暮れ始め、そろそろ辞めるかーと、時計を見る。時刻は4時。学校は終わっている時間。

「あ!今日美容室予約してたんだった!」

やべえ!と私は二人のことなどお構い無しに走って自室に戻る。
遠くから「なんだあいつ」と呆れた声が聞こえたけど聞こえぬふりをした。予約してんのに遅刻はあかんでしょう。

「パンちゃん、見て見て巻いてもらっちゃった!」
「俺、人間のそういうの本当にめんどくさいなーて思うよ」
「可愛いって言えや、この世界で生きてるんだったらよぉ」

美容室から帰宅し寮でパンダと会ったためしっかりセットしてもらった髪型を見せびらかした。
でもパンダはパンダだから髪巻いたからって別になんとも思わないらしい。乙女心を理解しようとする努力は辞めるんじゃねえぞ。

「パンダ今日一緒に寝ようよー」
「えー、寧々子寝相悪いからなー」

もふもふな背中によじ登ってしがみつく。これだよこれ、トトロの腹の上で寝るめいの気持ち。パンダ今立ってるからしがみついてるのくそしんどいけど。

「それよりお前、随分と痩せたな」
「へ?そう?」
「もっと重かったしもっと胸あっただろ」
「え!!!」

すぐにパンダからおりて自分のおっぱいを触る。自分ではわからん。ブラウスのボタンを外して上からそっと覗いてみると、なんとブラと胸の間に隙間ができているのだ。前までおっぱいの肉がこのブラジャーいっぱいに詰まってたというのに。

「え、え!痩せるのはいいけどおっぱいはアカンよ!!」
「あと顔色も悪い。ちゃんと飯食ってるか?飯って言い方もあれだけどな」
「んー…そうね。そうね…。2日に1回くらい…かな…」
「量は?」
「200ml…?」

いつもその3倍は飲んでるだろ。と言われ静かに頷く。
あと悟から血を貰ってない。悟の血は私の元気の源だったから、逆に食欲にも影響してる気がする。

「えー、おっぱい減るのは困るよ。真希ちゃんと並ぶとヘコむ…」
「実際ヘコんでるじゃん」
「ヘコんでるというか萎んでる…」

そうか、あんまり最近食欲無いんだけどな、おっぱい萎むんだったら無理やり飲むしかないかあ。
ため息をつくと、「そんなに気に病むな」とパンダは頭を撫でてくれる。
優しいパンダ。あんたとセックスができないのを本当に残念に思うよ。