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ついに京都姉妹校交流戦。
野薔薇ちゃんが大荷物で集合場所まで来たものだから、私はついつい笑ってしまった。
どうやら京都に行けると思っていたらしい。残念、去年憂太が無双したおかげで東京校が勝っちゃったので、今年の開催は東京校なのだ。
それを聞いた野薔薇ちゃんは憂太に対してめちゃくちゃに怒ってた。動画にとって憂太に送っとこ。
そうこう騒いでたら京都校のお出ましだ。
アルマゲドンみたいに横並びでなんか鬱陶しい。

「あら、お出迎え?気色悪い」
「うるせえ早く菓子折りだせコラ。八ツ橋くずきりそばぼうろ」
「しゃけ」
「腹減ってんのか?」
「うおああロボがいる!野薔薇ちゃん!ロボがいるうう!」

うわああ!と二人で盛り上がる。なにあれどうなってんの、声もメカメカしいし、呪骸!?パンダと一緒!?かっこい…、いいか?なんかよく見たら怖い。
そうこうしてたら歌姫が現れたから私は思わず駆け寄って抱きつく。遠征ぶりの歌姫なので嬉しくてたまらない。歌姫も私をよしよししてくれて、それはもう満足した。

「で、あの馬鹿は?」
「悟は遅刻だ」
「バカが時間通り来るわけねーだろ」
「誰もバカが五条先生のこととは言ってませんよ」

馬鹿で通じるところがすごいよな。でも歌姫のいう馬鹿は間違いなく悟なので全く問題ない。

「おまたー!!!」

その馬鹿は可愛い生徒を轢き殺す勢いで台車を転がしながらやってきた。
白い大きな箱がのってて、その上には悪趣味な人形が置かれている。

「やぁやぁ皆さんお揃いで。私出張で海外に行ってましてね」
「急に語り始めたぞ」
「はい、お土産。京都の皆にはとある部族のお守りを。歌姫のはないよ」

いらねぇよ!!と歌姫が叫ぶ。歌姫は普段すごく大人っぽくてしっかり者のイメージだけど悟が絡むとどうしてもヒステリックになってしまう。なんか可哀想だ。
そして東京都のみんなにはこちら!!とものすごいハイテンションで台車をまわし私たちの方へ向ける。
ハイテンションな大人って不気味ね。と野薔薇ちゃんがぼそっと呟き、先程から悟に感じてた気持ち悪さの正体を見事に言い当ててくれたような感じがして心の中で拍手を送った。
んで、

虎杖悠仁、生きてた。

箱の中に入ってたのは死んだはずの虎杖悠仁。おっぱっぴーとか意味不明なことを言いながら陽気に箱から登場したけど突然過ぎて反応に困る。
よっぽど馴染みのある恵や野薔薇ちゃんもすんごい顔して黙ってる。
なんだろ、どうせ悟のことだからサプライズがどうのこうのでこうなったんだろうけどすべり倒してるよ虎杖悠仁が可哀想だよ。
唯一、楽巌寺学長がめちゃくちゃに驚いていたんで悟にとってはこのサプライズ、大成功かもしれない。死ぬほど楽巌寺学長煽ってて夜蛾に怒られてたけど。

「あのぉ〜これは…見方によってはとてもハードなイジメなのでは…」

交流戦初日の種目が発表され、東京校サイドミーティング。
野薔薇ちゃんがどう用意したのか、遺影の額縁みたいなのを虎杖悠仁に持たせて正座をさせている。
内心虎杖悠仁が生きていたのが相当嬉しかったんだろうな、と思ったら野薔薇ちゃん可愛すぎて尊い。すき。

「まあまあ、事情は説明されたろ、許してやれって」
「喋った!」
「しゃけしゃけ」
「なんて?」

私以外の二年とは初めましてな悠仁はクセ強めな二年生に少し驚く。
そうだよね、喋るパンダ面白いよね。棘のことを丁寧に恵が説明して、パンダも補足に入るが悠仁がよっぽど気になるのはパンダが喋っている事だった。

「で、どうするよ、団体戦形式は予想通りとしてメンバーが増えちまった。作戦変更か?」
「そんな時間ある?」
「おかか」
「悠仁次第だろ。何ができるんだ?」
「殴る、蹴る」
「そういうの間に合ってるんだよなあ」

真希ちゃんいるしね。パンダもパワー型だしね。
でも恵が言うには、悠仁が呪力なしの勝負だったらここの誰よりも強いと断言したから思わず二年生全員で悠仁を見やる。
なるほど、東堂先輩と戦った経験のある恵が言うんだから、信じても良さそうだ。
団体戦の種目は、区画内に放たれた二級呪霊を先に祓った方が勝ちのレース形式。もし時間内にどちらも討伐できなかったら、他にも湧いている三級以下の呪霊を多く祓った方が勝利。
それ以外はなんでもあり。相手を殺すのはだめ。
京都校の奴らをボコボコにしてもいいし、汚い手だって使える。
初めての交流戦にワクワクが止まらない。早く京都の人と戦いたい。

「東堂パイセン、絶対に京都校の人と連携とかなしに直に私たちぶっ殺しにくると思うよ」
「だな、真依も私狙いで便乗してくるかもな」
「愛されすぎでは?」
「嫌われてんだよ」

本当にそうかなあ、と思うけど姉妹間のことはあまりよく知らないし詮索もするのも野暮。でも私は真依ちゃんのこと真希ちゃんにかまって欲しくてしょうがない妹に見えて仕方ないんだよな。まあ、それは言う必要ないか。本当かどうか知らんし。

「東堂は化け物だ。全員で相手して全滅するのが最悪のパターン。だから足止めとして一人だけ、パンダか恵を置いていくつもりだったが…。虎杖、お前に任せる。勝たなくていい。できるだけ粘って時間を潰せ」

納得の悠仁ご指名。あのスーパーゴリラに殺されないか心配だけどきっと悠仁ならやってくれるだろう。
勝たなくていいとは言われているが、やるからには勝つとなかなかに強気だし、死んでいる間に悟とかに相当仕込まれたんじゃないだろうか。それかただの思い上がりか。

「んじゃ、あとは打ち合わせ通り。行くぞ」

ある程度作戦を練り直し、まああとはどうにかなるだろということでスタート位置まで移動する。
禅院家の邪魔のおかげで昇級できてない真希ちゃんの名前を轟かせるべく京都校をコテンパンに負かそうということで、円陣組んだりはしなかったけどみんなで心をかためる。
「んじゃまあ。勝つぞ」とかいって先頭きっちゃってた悠仁に真希ちゃんがすかさず「なに仕切ってんだ」と蹴りを入れてて普通に笑った。