28

ついに交流戦の一日目の団体戦が始まった。
私の役割は手持ちの雑魚呪霊を散らして本来狩らなきゃいけない雑魚呪霊とごちゃごちゃにすること兼呪霊討伐。みんなチームに別れて動いているのに私だけ単独行動でめちゃくちゃ辛い。
開始直後、案の定東堂先輩が一人で木をなぎ倒しながら突進してきて、計画通り悠仁一人で対応させる。あとは散り散りになって、今だ。
ある程度呪霊を放ってあとは二級呪霊を探す。探知能力に長けていればいいんだけどなあ、と静かな森の中で佇んでいると、野薔薇ちゃんから電話がきた。

「ふぁーい、どした?」
『寧々子さん、京都校の人見た?』
「いんや、びっくりするほど会わないけど」
『パンダ先輩が言うにはまとまって行動してるらしいわよ。多分、虎杖殺すつもりだって』
「え、まじか。有り得るね〜」
『私たち、虎杖の様子見に行ってくるから寧々子さんは引き続き二級呪霊探してて』
「了解、気をつけて」

ため息でるわ。楽巌寺学長、容赦ないな。それに応じる生徒も生徒だ。
まあ、悠仁のこと知らない人からしたら呪い以外の何者でもないだろう。それは私だって身に染みて分かっている。
さて、私は私の仕事を。とプラプラ歩いていると、私と同じく呪霊狩りをしていた棘を鉢合わせた。

「棘〜おつかれ〜」
「こんぶ」

なんか機械の手持ってる。なにしたんだろ怖。
それをゴミみたいにポイッと捨てて連れていた恵の式神を返した。

「二級見つけた?」
「おかか」
「悠仁大丈夫かな」
「ツナ」
「だよね〜」

まったく何言ってるか分かんないけどまあいいや。
二人で行動してたら非効率かな、せっかく棘に会えたけど別れるべきかなと悶々考えていたら

「「!!」」

気配。とてつもない呪力。
二人でそちらを見やると木の影から現れたのはとても雑魚には見えない呪霊。あれが二級呪霊か。と二人で攻撃態勢に入ったら、その呪霊はぐりんと白目を向いて倒れる。
やはり、とてもじゃないけど二級の呪霊の気配には思えなかった。
続いて現れたのは、目から木が生えている人型の呪霊。
恐らく悟が前に襲われたらしい未登録の特級呪霊。

「しゃけ、いくら、明太子」
「や、やるしかないよねえ〜」

棘はやる気満々だが私はちっとも勝てる気がしない。とりあえず手持ちの一級を出す。仮想怨霊テケテケ。私の扱える呪霊の中で一番呪力が高いが…突然大きな根が物凄い勢いで生えてきて貫かれてしまった。私は急いで乗り物用呪霊を呼び出し、棘を乗せてその根を避ける。
なにこれマジでやばい。
その根はずっと私たちを追ってきて攻撃をするどころか逃げるので精一杯。
森を抜けて校舎側へ逃げ込むと、ちょうど恵と京都校の人がやり合ってて、突然のことに固まっていたが棘が言霊で逃げさせる。
その根は地面に深く突き刺さり、漸くその勢いを止めた。
いつの間にか帳もおりていて、なにか高専が攻撃を受けていることくらい誰にでも分かった。

「何故高専に呪霊がいる。帳も誰のものだ」
「多分呪霊と組んでる呪詛師のです」
「?何か知っているのか」
「前に悟を襲った特級だと思うよ、見た目も悟の描いた絵に似てるし」

てかこの京都校の人めっちゃ血の匂いする。あんまり近づきたくないな、と思って棘の影に隠れとく。この人の名前は加茂憲紀というらしい。御三家の方でしたか。とりあえず血の匂いやばい。
棘が悟に連絡をしようと提案。私と恵はすぐ理解したけど憲紀はワケわかんなかったらしくて狼狽えていた。
そんなことはどうでもいいでしょうが。と思ったら恵がきちんと代弁してくれた。

「相手は領域を使うかもしれません。距離をとって五条先生のところまで後退ーーー」

なんて素早い。特級は目にもとまらぬ速さで私たちの背後をとり、悟に電話をかけようとした恵のスマホを破壊する。
そして

「え、ちょ!?」
「夜蛾先輩…!!」

なぜか私はその特級に担がれた。ガッチリ掴まれてまるで身動きがとれない。

『動くな』

棘が呪言を唱えてくれたおかげで特級の動きがとまり私は直ぐに抜け出す。
考える暇はない。とにかくこの特級を止めなければ。
各々に攻撃をするが、なるほど憲紀の術式は血を使うらしい。やばい、匂いがキツくてこんな場面なのに気が散って集中できない。

「飲み込め、白蛇!」

なんでも丸飲みにできる蛇の呪霊。しっかり特級を捕らえるが、スナック菓子をパーティー開けするみたいに内側から破られてしまった。ダメだ、すぐに下げるべきだった。

「ちょっと憲紀その術式やめてー!」
「な、なぜだ!?」
「なんでも!」

その間も恵が呪具で特級を切りつけたりもするけどてんで効いてない。
やいのやいの憲紀と言い合っていると途端に頭の中に流れる言葉。特級の声。何を言っているのか分からないけど、その意味が頭の中できちんと処理される。なんて不思議な感覚。

『やめなさい、愚かな児等よ。私はただこの星を守りたいだけだ』
「なにこれ、きもちわる」
「呪いの戯言だ。耳をかすな」
「低級呪霊のソレとはレベルが違いますよ。独自の言語体系を確立してるんです」
「…狗巻を下がらせろ」

その呪霊が言うには、自然が泣いているから人間死ねということだった。そりゃ自然破壊、地球温暖化、人間は自然に対して色々やってはいるけども、はい分かりましたで死ぬ訳にはいかんでしょ。

「と、とりあえず、逃げよ!!」

四人で走り出す。なんとか攻撃を避けながら、棘の言霊に頼りつつ、反撃をする。
私は棘が潰れないように反転術式で頑張って喉を癒すけど私の術式では力不足かもしれない。この攻撃方法は時間の問題だ。
早いとこ夜蛾とか悟と合流したいしたいところだけど、そうも簡単にはいかなそうだ。