気がついた時には、寝慣れないベッドで横たわっていた。
見回すと、ソファには夏油が座っていて、小難しそうな小説を読んでいた。
目を開けただけでピクリとも動いていないのに起きた私に気がついて、なぜか優しく微笑みかける。
「起きたかい」
「…あれ、私…」
「原液だということを言い忘れていたよ。気分はどうだい」
「まだ…なんか、熱い…」
「すごい汗だね。着替えるかい?」
「うん…。脱がして…夏油…」
あれ、私おかしい。そんなことを言いたいわけじゃないのに。
お安い御用さと夏油は私の服に手をかける。
体中が汗ばんでいて、気持ちが悪くって、服をゆっくり脱がされると肌が空気に触れてゾワゾワと鳥肌がたった。
「これだけで感じてるの?」
「あ…、」
「前も思ったけど相当敏感だよね。触って欲しい?」
「っ、ん…ッ、触って…ッ」
違う。本当に違う。私こんなことを言おうとしていない。
でも夏油に質問される度に口から出るのは言いたいこととは正反対なことで、あれよあれよという間に身体中を夏油にまさぐられている。
ねちっこく、もどかしい快感が体中を襲う。その度、体がビクビクと跳ね上がり、まるで自分の体ではないみたいだ。
結局最後まで致してしまい、夏油は私に覆い被さるように果て、今も荒い呼吸を繰り返している。
「…な、なにあの水……ッ!んうッ」
未だに収まりきれていないソレが私の中からずるりと引き抜かれる。その刺激でまた一瞬の快楽が襲い、体は正直というか、私の中から離れたソレを名残惜しそうにひくつかせた。
「っはあ…、」
「物足りなさそうな顔」
「も、十分……で、何です、か…あの水…」
大方あの液体に何か"そういう成分"でも入っていたのだろう、あとは天の邪鬼なことを言わせる呪いとか?分からないけれど、この男は答えてくれる気がないらしい。相変わらずの含み笑いではぐらかしてくる。
もういいや、なんでも。頭がボーっとして何も考えられない。
未だに覆い被さっている夏油の胸を押し返し、すぐに立ち上がろうとしたけど、足の力が抜けていて転びそうになる。痛みを覚悟はしていない、案の定、夏油が私の体を支えてくれて、私を引き寄せた。
「…猿とこんなことしてていいんですか?"ご家族"の方に反感を買っているのでは?」
「彼らはそんなに窮屈な人間ではないよ。それに今は撫子も家族じゃないか」
「そう思ってるのはあなただけだと思いますけどね」
夏油の腕の中、するりと抜け出して力の抜けた足になんとか力をいれる。そのままなんとか服を着て黙って部屋を出た。「もっと余韻に浸ろうよ」とかなんとか吐かしていたが、一人で賢者タイムキメてろ。
途中、廊下で美人秘書と出くわし、「この売女」と捨て台詞をはかれた。
ほら、私のことを"家族"なんて思ってるのは、お前だけだ。
しかし私のおかげで夏油に対して"家族"の不信感が募るのだとしたら、なるほど、あいつと寝るのも無駄ではないかもしれない。そこから潰していき、大切な"家族"に見放されるあいつの姿を見るのも悪くない。
私は呪いというものがどこまで便利なものかなんて一切合切分からないが、どうか心の中を読む呪いが存在しませんようにと、いるかどうかも分からない神様にお願いをした。