はじめまして・狗巻棘

第一印象は、髪の毛のセット面倒くさそうだな。て感じ。
柔らかそうな髪の毛なのにワックスでツンツンと固められていて、多分時間をかけてセットしてるんだろうなって思った。あと三白眼が魅力的で、普通にかっこいい男の子だなって思った。
「挨拶しましょう」て悟が学校の先生みたいなことを言って、私たちの手を掴んで、無理やり握手をさせてきて、初めての同年代の男の子との触れ合いに、すごく恥ずかしくて、まともに棘の顔を見れなかった。

「高菜」
「え?」
「ツナ」
「…え?」
「あー、棘は呪言師の家系でね。言霊で呪わないようにおにぎりの具しか喋らないんだ」
「しゃけ」
「お、おにぎり…」

ってあのくそ汚物のこと?声には出さず首を傾げると、棘は「しゃけ」と頷いていた。
まじか。ついに私も高校生で、恋愛漫画のようなボーイミーツガールが起こるかもと思ったのに。
お米を食べた時のあの食感を思い出して少し気持ち悪くなる。やばい、ちょっと吐きそうかも。

「ツナ?」
「あっ、いや、ごめん…。ちょっとトイレ…」

心配そうな顔をして棘が私の顔を覗き込む。本当に、本当に好みの顔をしているというのに、ここで恥じらいでもしてちょっとドキドキな展開になったら良かったのに、と思いながら、悟をちらっと見ると、私の動揺した姿が面白いのかめちゃくちゃ笑いを堪えている顔をしていた。
棘に何回も謝ってトイレに駆け込む。吐きはしなかったけど、鏡の前からしばらく動けなかった。
やっとの思いで教室に戻ったら、棘がすごく心配してくれて、でも口から出るのはおにぎりの具しか出てこないから、また気持ち悪くなってきて、パンダもそれを察したのか棘と私を離してくれた。
本当にごめん、感じ悪いよね、本当に。と泣きたくなっちゃいそうだったけど、好みのタイプの人の目の前で嘔吐なんてごめんである。
それから棘は色々私に気を使って話しかけたりしてくれたけど、私はとてもじゃないけど棘の話し相手にはなれなかった。でも正直に私の境遇について話したくもない。なんか変な女の子、で印象を終わらせてくれている方がマシだから。
パンダには何回も何回も「棘のことが嫌いなんじゃない!」と伝えて欲しいって言ったけど、本当に伝わってるのかは分からない。だっていつも棘のことを避けると傷ついた顔をしているから。
それでも私のことを気にかけてくれたり、話しかけてくれる棘はすごく優しい。本当に恋に落ちちゃいそう。
なんとか克服してみせるから。それまで待ってて、棘。
克服したら、思い切って棘にアピールしてみよう。と、私は棘の迷惑も考えずに心に誓った。

棘視点にしようと思ったんだけど棘は自分のこと『俺』ていうのか『僕』ていうのかわかんなくて、しかしどちらの棘も良い…!となった挙句やっぱり刺視点は違うなって思って辞めました



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