はじめまして・パンダ

「パンダさん!」
「な、なんだお前!」

正道が突然連れてきた子ども。遊び相手になってくれと言われ、俺のおもちゃがいっぱいのパンダ部屋に問答無用で無遠慮に上がり込む。

「やが!パンダしゃべった!」
「特別なパンダなんだ。仲良くしてくれるか?」
「うん!すてき!パンダさんよろしくね!」

ぎゅう、と強く抱きしめられていつも正道に抱えられてるとにとはまた違う感覚に陥る。柔らかくてふかふかしてて、いい匂い。でもぬいぐるみを抱いているような感覚とも違う。
ゆっくりとその小さい人間の背中に手を回すと、正道は外見めちゃくちゃ怖いけど、嬉しそうな顔をしていて余計に不気味な顔になっていた。
それから、俺のひとり部屋は、寧々子と一緒の、二人部屋になった。
一緒におもちゃで遊んで一緒に寝て、一緒に風呂に入って、一緒に寝る。その繰り返しの毎日。
最初は部屋は狭くなるしひっついて寝られるのは鬱陶しいし、めちゃくちゃ嫌だった。でも、一緒に遊べるのは楽しかった。
寧々子は素直だし、喧嘩も多かったけど、一緒にいれるようになって、一人ぼっちであの部屋にいた時よりもずっと、幸せになったと思う。
寧々子はよく俺に懐いていた。見た目がさすがパンダで可愛いのもあるだろうが、寧々子がまともな食事ができない分、寧々子といるときは絶対に何も食べないようにしていたから。お互い"普通"ではないと、仲間意識があったのだと思う。だから寧々子は今でも俺の事を呪骸だから食事の必要ないやつと思っている。
だけど本当は、カルパスが好き。

「パンダぁ、今日一緒に寝てもいい?」

高専に二人で入学してからも変わらない。さすがに中学くらいの年になると部屋も別々の部屋を与えられたけど、頻繁に寧々子は俺の部屋にやってきた。
さすがに俺も呪骸とはいえ、どっちかというと男寄りの意思を持っているし、正道も悟もなんか複雑そうな顔して俺の事を見てくる。
いや、もう"お年頃"を理解してからは俺から寧々子を誘うことはない。寧々子からやってくるんだ。
別に悪い気はしていない。だってこの中で誰よりも寧々子と同じ時間を過ごしてきたのは、俺だから。

「しょうがねえな〜」

俺の腕に手を回す寧々子に抵抗なんてしないし、別に照れとかもない。でも、ちらりと悟に視線を向けると、えらく真顔で俺の事を見ていた。
やっぱり人間はおもしろいな。俺にはその感情は分からないけれど。
寧々子がこうして俺にべったりなのは可愛いし、それを見てる悟が妙に冷静なのもウケる。
でも癪なのは寧々子がこうやって俺に甘えてくる時って結構な確率で悟となんかあった時だから、別に優越感なんてものはない。

「パンダだいすき」

それは寧々子が悟に感じている"すき"とは違う。寧々子が俺の事を好きなのは、俺が都合がいいからだ。

「寧々子が好きなのは悟だろ」
「…、パンダいじわる」

ニヤニヤ、わざとそんな顔をして煽ると寧々子はムッと顔を顰めて口を尖らせた。

「パンダのこともだいすきなの!」
「わかったわかった、叫ぶなよ」

余計に腹が立ったのか腕を思いっきり締め付けられたけど俺は呪骸なので痛くも痒くもない。
正直、酷いと言われるかもしれないがこの先寧々子が普通の人間と普通の恋愛関係を築けるとは思えない。本人はめちゃくちゃ受肉体ってのを気にしてるし、人間と自分は違うんだって、そんな風に思ってる。でも必死で取り繕って、人間らしく振舞って、溶け込もうとしてるのを俺は知ってる。俺だから知っている。
だから寧々子はずっと俺の傍にいてくれるだろう。
俺たちは親友。
寧々子にとって、唯一無二の存在だから。


寧々子のために今まで寧々子の前でご飯食べなかったパンダかわいい。本当はカルパス好きなのに我慢してるパンダかわいい。



TOP