嘘をついたら


こうして、自分が快楽に流されるような人間だとは自分でも思わなかった。
ぐったりとベッドで横になり眠っている小春さんの、汗ばんだ額に前髪がはりついて、起こさないように、その髪を丁寧に払っていく。

「んん、」

先程まで一生懸命私のモノを咥えていた可愛らしい口から、誂向きの可愛らしい声が出る。しばらくその寝顔に見蕩れていると、本当は、今はその姿を視界にも入れたくないしその声が鼓膜を通るのすら腹が立つ、人を馬鹿にしたような笑い声が隣からして、思わず顔を顰めた。

「マジで惚れてんじゃん」
「惚れていますよ。だからさっさと引っ込んでいただきたい」
「えー、でも小春のまんこは唯一無二だから…」
「誰のものでもそうでしょう」
「いや、分かるだろ?」

分かる。とは絶対にこの人の前では言いたくない。例え本当はそう思っていたとしても。

「五条さんは別に女性には困っていないでしょう」
「小春も困ってないと思うよ。僕以外にもセフレいるし」
「…存じています」

そう、困ったことに、それが厄介なのだ。あの夜、あれほど私に熱烈な告白をしてきた彼女は本当は恋人を作る気など更々なく、私はそれにまんまと引っかかってしまいこの体たらく。でも私は敢えてそれを選んだ。
彼女にそこから動く気がないのなら、一度そこまで堕ちてやればいい。釣り合わないというのならば、私も釣鐘になればいいのだ。
それまでに、私は彼女のことを欲している。
五条さんに恋愛感情を抱いている様子もない。むしろ、好きだと言った時の反応を見たら明らかに慣れていない様子。
勝算はある。しかし邪魔なのは、この男。

「…五条さんは"こうなること"を想定してあの日私を呼んだんですか」
「え?フツーに任務で僕相手できなくなっちゃったから七海に相手してもらおうと思っただけ。なんか面白いことにならないかなとも思ったけど」

本当になっちゃったね。
いつもの調子で笑いながら、五条さんはいつもの黒いジャケットに袖を通す。どうやら高専に戻るようだ。小春さんの前だからかサングラスだったのが、黒いアイマスクに変えて、明らかに伊地知くんであろう電話相手に車を呼んでいる。
補助監督は送迎タクシーではない。振り回されてなんて可哀想にと思うが、一刻も早くここから出て欲しかったので何も言わずに見守っていた。

「七海、今日はー?」
「10時からなのでもう少し時間に余裕はあります」
「んじゃ小春のことよろしくね」

未だ眠っている彼女の頭を優しく撫でて、五条さんはホテルを出た。今は朝の7時5分。彼女も店の開店準備があるだろうから、30分になれば起こしてやろうとも思ったのだが、私にはどうしても腑に落ちないことがある。
彼女は昨夜のことを忘れている。また忘れている。私はこの手で抱いた彼女の感覚を隅々まで覚えているのに、彼女はすっかり忘れている。それなのに、先程五条さんのモノで上書きされたと思うと悔しささえある。

「小春さん」

名前を呼ぶと彼女はうっすらと目を開けて、柔らかな笑みを浮かべる。起きていたのか。どうやら眠っているふりをしていたようだ。そのまま彼女にキスをすると、彼女は快く迎え入れてくれた。
小春さんの口内は形容しがたい独特な味がして、先程この口で自分の欲を受け止めたからなのだと気がついた。それが尚更愛おしく、込み上げてくる自身の熱情に抗うこともなく従っていく。

「小春さん、好きです」

その言葉を言うと、彼女は顔を真っ赤にする。それがどうしようもなく愛おしい。そのままかぶりつくようにまたキスをし、行為に及んだ。
我ながらねちっこい抱き方をしたと思う。それでも私に一生懸命かきついてビクビクと体を跳ねさせる彼女を見ると、さほど悪い抱き方ではなかったようだ。
聞きたい言葉も聞けたし、今日はこれで勘弁しておこう。









眠っているような、起きているような、そんな中途半端な状態で、私はぼんやりと、遠くの会話を聞いているような感覚で悟くんと建人くんの会話を聞いていた。けれどぼんやりとしすぎて内容までは頭に入ってこない。なんだか私の話をしているような気もするし、そうでは無いような気もする。そうしていると恐らく悟くんに頭をぽんと撫でられて、ガチャンとドアの音に悟くんは仕事に行ってしまったのだと察した。少しその音で、意識が浮上する。ベッドに腰をかけていた建人くんは私の枕元に手をついたのか、少しだけ、沈む感覚がある。

「小春さん」

名前を呼ばれたので、ゆっくりと目を開ける。建人くんは「起きていたのか」と言わんばかりの顔をしていて、笑ってしまった。
そのままキスをされて、舌を絡め合う。さっき建人のを飲んだまま口を洗っていないけど大丈夫なんだろうか。決して、美味しいものでは無いから。
けれど何も心配いらなかったようで、徐々に熱を持った建人くんの逞しすぎるちんこを押し当てられ、子宮のあたりがきゅんと疼いた。

「小春さん、好きです」

また、その言葉。苦手なのその言葉。顔が熱くなるのを感じて、建人くんの完全にマジな顔をまともに見ることが出来ない。だけど目をそらした私にまたかぶりつくようにキスをしてきて、そのまま愛撫が始まってしまった。

「んぅ、」

胸の先端を口に含まれ、少し痛いくらいに甚振られる。舌で押しつぶすように舐めて、たまに噛まれて、ぢゅる、とえっちな音がなるくらい吸われる。もう片方は親指でぐにぐに弄られて、ぴくぴくと体が反応するのが止まらない。
「気持ちいいですか」といちいち聞いてくれる建人くんに一生懸命頷く。まだ触られてもいないのにアソコがじんじんして、もじもじと下半身を捩らせていると太ももを広げるように大きな手が割って入ってきた。
ぐち、と音を立て、先程悟くんを迎え入れたおかげですっかりとほぐされた膣内に悟くんの指とはまた違う、太くてゴツゴツした指が私のナカに入ってくる。すりすり膣壁を擦られて堪らず腰が浮いて、自分からより良いところに当たるように、つい腰を揺らしてしまう。

「物足りなさそうですね」
「ひ、ぁ…っ、耳、だめ…っ」

ぴちゃり。吐息の混ざった低い声とともに耳を食まれ、わざと音を立たせるように舐められる。建人くんの息遣いと耳をなぞる舌の感触、鼓膜のすぐそこで聞こえる水音、私の膣内を優しく撫でる指、全てが焦れったく、だけど興奮を煽るには十分すぎて、気がおかしくなってしまいそう。

「ぁっ、建人くん…イキたい…」
「まだダメです」
「えッ、ひゃん!」

乳首をきゅ、と抓られて、強い刺激にビクッと体が跳ね上がる。もうなんだか体中もどかしくて泣いちゃいそうです。涙目になりながら建人くんを見つめると、建人くんは挑戦的な顔をして、笑った。

「け、建人くん…?」
「今回は、絶対に忘れさせません」
「ぁ、んん…っ!」

なんて人でしょうか。イクのはまだダメと言いながら、ナカの指を一本増やし、膣内を広げるように動いたり、膣壁をぐっと押し当てたり、Gスポットにその無骨な指が触れた時にはイけると思ったのに、ぎゅうとアソコがしまって絶頂の準備を始めたところで刺激が止まる。

「う…、やだ、やだ建人くん…いじわる…」
「私は意地悪なんです。これも覚えておいてください」
「あっ、ああ…っ!」

これは復讐だ。酒を飲みすぎて建人くんとの時間を二度も忘れてしまった私に対する復讐。
膣液が溢れて、ベッドシーツには大きなシミができていた。おしりもひんやりと冷たい。でも焦れったい刺激は止まず、この復讐はいつまで続くのだろうか、早くイキたくてプルプルと体が震えている。

「も、もおやだあ…、けんとくん…っ、ごめんなさいっ、ゆるして…っ」
「イキたいですか?」
「イキたい…っ、はやくけんとくんのおちんちんほしいの、」
「じゃあもう一度、あの時の言葉を言ってください」
「あのとき…?」

どの時?こて、と首を傾げれば、また耳をかぷりと噛まれてそのまま囁かれる。「初めて会ったあの夜の時です」と、ずぅんと子宮に響くような低い声で、ぞわぞわと体中鳥肌が立った。

「おぼえてない…」
「私がちゃんと話してあげたでしょう」
「やぁ、耳…っ、ん、おかし、く、なるっ」
「耳ばかりは嫌ですか?じゃあこちらも」
「あっ!そこ…っすぐイッ……、んう、」

くり、と陰核を捏ねられて、イク、と思ったらまた手をはなされる。もう脳みそがイキたくてイキたくてわけわかんなくなっちゃって、ぼろぼろと涙が止まらない。
その顔を見て建人くんは、悪いことをしてしまったか、というような顔をして、涙を舐めとる。そんな顔するなら、こんなことやらないでほしいです。

「うっ、う…っ、すき、すきぃ、、建人くんのこと、すきなの…っ」

こんなことを言わせて、言質でもとるつもりか。その言葉を聞いてすっかりご満悦な建人くんは陰核を優しく親指で撫でて、でも膣内の指はGスポットを激しく責めてきて、どんな動きだバカヤロウ!なんて思いながら私は呆気なく果てた。
荒い呼吸を胸を上下に動かしながら繰り返し、整えていく。
私のことをとにかく可愛いと言って、頬や首にキスを落としていく建人くん。厄介な男に気に入られてしまったものだと、あの夜の自分を呪いたくなった。

「ふぁ…っ」

まだ余韻が残っているソコに、ぴっとりとよく知ったモノがあてがわれる。亀頭に膣液をまとわりつかせているのか、入口をくちゅくちゅと音を立てながら擦られ、またそれがもどかしい。
これはおねだりしてほしいパターンか、と、ヤリマンは悟る。

「んぁっ、けんとくんっ、おくっ、奥ほしいよお…っ」
「絶対、忘れないでくださいね」
「忘れないっ!ずっと覚えてるか…あ、んんぅっ!!」

物凄い質量がずずずと入ってくる。すごいとは思っていたけどすごい。むしろこんなの覚えていない私がすごい。
悟くんのもめちゃくちゃだけど、太さだけなら建人くんの方がめちゃくちゃなんじゃないでしょうか。目がチカチカして、もしかしたらちょっとトんでたかもしれない。「大丈夫ですか」という建人くんにハッと我にかえり、震えながら「少しだけこのまま」とごまかすように建人くんを抱きしめた。

「ふ、昨日と一緒の反応ですね」
「だっ、だよ、ね?建人くんの、すごい…ぃ、」
「でも私も限界なので、すみません」
「あっ!?やっ、んんっ、け、建人くん、ま、まだ…っんぅ!」

慣れてないのに!という私の叫びは建人くんの唇に塞がれてしまった。私の嬌声は建人くんの口の中に全部吸い込まれて、ぱちゅぱちゅと肌同士がぶつかる音と、抽挿を繰り返す度に膣液がぐぢゅぐちゅ混ざるえっちな音と、荒い息遣いばかりが部屋中に響いている。

「は…っ、小春さん、す、きです…!」
「わ、わたしも…っ!すき、すきぃ…!!」

こんなのもう私の負けでいいや。だって、そんなの、本当のことだもん。
あの朝、貴方の顔を見た瞬間からぶっちゃけ惚れてた。いや、正確には、惚れかけていた。それがあの後私のことを優しく介抱してくれて尚更惚れた。でも一番最初に惚れたのは、きっと、あの日の夜。
でも悟くんの後輩なんて、それは、それはダメでしょう。だから一生懸命自分の気持ちを偽って、否定してきた。でも負けです。負けました。私は貴方が好きです。

「ん、はぁっ!イク…ッ!や、んう…っ!イッ、ーーーッ!!」
「…ッ!は、ぁ…っ!ん、ぐ…っ」
「や、やだ!イってる!イってるから…!」
「すみません…っ、ん、とまら、な…っ」
「んああッ、あぁ、あぁあ…っ!!」

この一瞬で何回イったかな。あまりの刺激に数えることなんてできませんでした。建人くんが無事果てた頃にはもう全身びくびく痙攣してて、アソコもずっときゅんきゅんしてて、しばらくの間無我夢中で建人くんにしがみついていた。

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