手の上で舞う


・いかがわしい事をしてもokな年齢になったエレン(18〜19位)
・if的設定でエレンは調査兵団の古株
・直接的な性描写はありませんが、それっぽい雰囲気全開なので閲覧にはご注意下さい


目が覚めてまず、下腹部の不快感を感じた。
のそりと体を起こしようやっと不快感の原因をつきとめたルネッタは未だ伸びてくる青年の手を払いのけ、奥から垂れてくる白濁を掻き出しティッシュで指を拭く。

危険日ではないから、と許可したのは間違いなく自分ではあるが長く調査兵団に属している自分がヘロヘロになって気絶するまで行為に付き合わせるとは何たる事か!

「他人への気遣いが出来るエレンっていうのが、まず有り得ないか」
未だ体内に深く刻まれたままの不快感を拭うには、シャワーを浴びる以外ないだろう。
一人ベッドの上で寝息を立てているエレンに鋭い眼光を飛ばしたあと、ルネッタは深い溜息をついてバスルームに向かった。

* * *

「なあ、オレの下着知らねぇ?」
「ひっ!」
髪から滑り落ちてくる水滴をタオルで拭きながら、今日の朝食はどうしようかと逡巡していたルネッタの前に突如としてその男は姿を現した。
完全に眠気が覚めていないのか、落ちてくる瞼を擦りいつもより低い起き抜けの声で尋ねてくるエレンがルネッタの姿──衣一つ纏っていない状態なのを理解するより早く、ルネッタは彼の質問に答えてみせた。

「エレンの下着なら箪笥の中!というか、私が部屋を空けてる間も勝手に出入りしてるでしょ!?」
「んー。わかった、サンキュ」
「私の部屋を何だと思ってるんだか……ハァ」
後頭部を掻いて脱衣場を後にしたエレンには後でよく言い聞かせておかなくては。
戦慄く口を必死に噛み締め、ルネッタはひとり決意を固めたのだった。

* * *

「ねえエレン。今日は朝から兵長達と会議が入ってるんじゃなかった?」
「……兵長に殺される!」
覚醒した途端、騒々しくなったエレンに糊付けされたシャツとピカピカに磨かれたブーツを差し出し、コートの場所を告げたルネッタは優雅に朝の紅茶を啜る。

「じゃあまた後でな!朝飯、美味かった」
──今日もまたエレンの一言に流され、全て有耶無耶になってしまうのだ。
この部屋より広く、快適な自室を持っていながらあの男はほぼ毎夜ルネッタの部屋に足を踏み入れる。
最初こそ口酸っぱくして嫌だと伝えたものの、毎度彼の言動によって「まあ、いいか」と思ってしまうくらいルネッタはエレン・イェーガーに惚れ込んでしまっている。
惚れた弱みに二度目の嘆息を吐き出しながら、彼が残した食器を片し彼女もまた部屋を後にした。


「アルミン、どうかした?私の首をじっと見て」
すれ違い間際に手を掴んだ聡明な同期、アルミン・アルレルトはルネッタの声に肩を揺らし途端に掴んでいた手を離した。
珍しく歯切れの悪いアルミンに疑問を抱きながらこれ以上、語る事がないならばと踏み出した足を再びその場に縫い止めたのは紛れもなく彼だった。

「ルネッタに"噛みつき痕"があるんだ」
「……はい?」
恐る恐る手持ちの鏡で確認したルネッタの顔が、みるみる赤に染まっていく。
シャツのボタンを全て閉め、アルミンへのお礼の言葉を残しルネッタは自身の持ち場までの道を辿る。
道中すれ違った顔馴染みがルネッタの様子がいつもと異なっているのに気付き声を掛けたが当人は「何でもない!」と躱し、課せられた仕事を迅速に終わらせると自室に逃げ込んだ。

「あー今日も疲れた」
「おかえりエレン。まず座ろうか」
「お前から誘ってくるなんて珍しいな?いいぞ」
「誰もベッドに座れなんて……手を引っ張る、なっ!」
二人分の重みに耐えきれず軋むベッドの音を聞きながら、ルネッタは冷や汗を浮かべ青年の金の瞳を見つめ静かに悟った。

* * *

ルネッタの腰に腕を回し、穏やかな表情で眠りについているエレンに対する憤りよりいつも流されている己の意志の弱さにずっしりと心が重たくなる。
初めてエレンと行為に及んだ時から、彼はルネッタの体に異常な程の鬱血痕を残した。
無遠慮に首筋につけられた鬱血痕を指摘されてからは、露出箇所に痕は残さなくなったが胸元や二の腕の内側、太股など皮膚が薄く、比較的痕が残しやすい箇所におびただしい痕跡を。
ルネッタという女には既に飼い主が居るのだと、他者に知らしめるように。
或いは自身の独占欲を目に見えて残す為──果たしてどちらが正解か、ルネッタの知るところではなかったけれどこちらにばかり所有印しるしを残し綺麗な体をしているエレンが本当に少しだけ、憎たらしく感じてしまって。

そろりそろりと体を起こし、横で眠るエレンの首に唇を当て吸い付いた。
いつもこちらがされている時のことを思い出しながら「絶対についた」とほくそ笑んで離したそこにはルネッタの唾液が月明かりを浴び、てらてらと光っているだけであった。
それが無性に悔しくて、も一度。
今度は噛み付くようにしてみても、首筋を濡らす唾液が増えただけでルネッタは肩を落とした。

「お前へたくそすぎ。こうやってつけんだよ」
「エレ、ンッ!?」
「お前がオレを煽るような事するから……しっかしルネッタは本当にキスマークが映えるな」
誰がつけた何のせいで、今日恥ずかしい思いをしたのだと……!迫り来るエレンの顔から逃れようと身じろぐと同時に、申し訳程度にかかっていたシーツが床に落ち月明かりに二人の裸体が浮き上がる。

「コレを指摘された時のルネッタの顔といったら……相手がアルミンだから良かったものの、他の奴には見せるなよ」
「随分といいご性格をなさってますね!隠れ見てほくそ笑んでたとか……」
「いつまで経っても初心な反応するもんだからさ、悪かった反省してる」
男の瞳に宿る月は欠けている。
ルネッタ・ローレンは己の手の内にあると知っているエレン・イェーガーはそっと唇を重ね、次にルネッタの口から出た言葉に満足気な顔をするのだ。


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極夜