噂のあの子
「……あそこに居る子が噂の統率力に長けてる子?」
鬼教官とも呼ばれるキースを唸らせた新兵の話は調査兵団上層部の耳に度々入ってきた。
主席卒業でほぼ間違いないと言われる黒髪の少女の一寸の隙も狂いもない動きに「新兵とは思えない身のこなしだね」なんて一人漏らしていると、先日名が上がっていた少女と思わしき人物が映りこむ。
「あらゆる事態を想定し、幾度か即席班での訓練を行っていますが、いずれもローレンが属している班が一位を取っています」
危なげなく立体機動を操作し、模型のうなじ部分を斬り付けたルネッタは空中で一回転した後、地面に降り立った。
わあという歓声と共に訓練兵数人が駆け寄り、口々に彼女の技能を褒め称えているように見える。
「急に押し掛けてごめんねー。今年の新兵は凄いってモブリットから聞いて、いてもたってもいられなくなっちゃって」
「ははは。恐らくそうだろうと思っていました。──途中まで送ります、ハンジ分隊長」
部屋に戻ったハンジがモブリットに今年の新兵は予想以上に凄かったと漏らし「せめて仕事を片付けてから見に行って欲しいんですが!」と怒られている姿を想像した教官は、小さく咳払いをした。
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極夜